第11話 ボクサーパンツ
「で、どうしたい?お前の希望を言ってみろ。」
「まず恋愛をして、いわゆる青春というのを感じてみたい。それから仕事に就きたい。それが夢だ。」
「2日でそれを実行するには、色々なところをすっ飛ばすことになるけどいいな?細かいことには目をつぶれよ?」
「ああ、わかっている。」
「はあ、しょうがない。乗りかかった船だ。おまえの相手してやるよ。ただな、お前は今さっき、それが夢だって言ったな?この先、夢、って言葉は使うなよ。」
「・・・・どうしてだ?」
「夢は眠った世界で見るもの。現実になかなかならないから夢なんだよ。で、この世がもし本当に神のゲームなら、夢を持った途端、その夢は遠くに逃げていく。」
「・・・・なんでだ?」
「ロールプレイングゲームの主人公の夢は何だ?」
「・・・・」
「魔王などの悪い奴をを倒し、平和な世界を作ることだろ?じゃあ、勇者がそれを実行したら、物語はどうなる?そこで終わっちまうだろ?だから、お前が夢を持った途端、この世の中は、なかなかその夢が達成されないように作り変えられる。」
「そんな・・・。じゃあ、夢は持つなっていうのか?」
「違う。夢じゃなく、目標にしろ。一つの通過点としての目標。」
「目標・・・。」
「例えばな、金持ちになりたいっていう夢を持つ人はたくさんいるだろ?そんな夢を持って簡単にかなえられると思うか?つうか、お前が知っている人間で、夢は金持ちです。とにかく、金が目的です、って言ってて実現した人間は何人いる?」
「・・・・」
「金を夢にしてしまうと、遠くに逃げていく。でもよ、金って、何かを実行するための手段でしかないだろ?いくら金があっても、その金は食えないし、鼻も噛めないし、それ自体は使い道がほとんどないだろ?」
「・・・・」
「目的があって手段がある。金は目的を素早く効率的に達成するための手段でしかないって言うことを理解しろよ?」
「・・・なるほど。」
「そういうわけで、夢じゃなく目標にするぞ。んで、目標は多く持て。一つだけにしちまうと、夢と同じくなってしまう。欲張っても全然かまわん。だから、お前がさっき言った目標は以下のようにしようか」大仏男は紙ナプキンに文字を書き始めた。
①アニー男になる
②アニー就職する
③アニー車を買う
④アニー家を借りる
⑤アニー結婚をする
⑥アニー海外旅行に行く
⑦アニー高級車を買う
⑧アニー家を建てる
⑨アニー悟りを開く
⑩アニー他人を救う
「こんな感じに色々目標を持とうか。この番号順に手にするわけじゃなく、順番が前後逆になってもかまわない。とにかく、すべてが目標だ。他にあるなら好きなだけ追加しろ。んでな、紙に書いて部屋の壁にでも飾っておけ。いつでも目に入るように。」
「わかった。」
「目的が明確じゃないと、成功もできない。何が成功なのか自分でしっかり理解しないと、オープンワールドで迷子になっちまうだろ?だから、自分の目標はしっかり紙に書いておくことが重要だ。よし、じゃあ、さっそく目標を達成できるように行動を起こそうか。いくら目標があっても行動しなければ何も始まらんぞ。ただな、この世はゲームだから、たとえ簡単な目標でもまじめに行動しないと達成はできないって事は覚えておけよ。」
大仏男は男に目標をかいた紙ナプキンを手渡した。
「わかった!で、これからどうするんだ?」
「ここから東京に行くにはいまだとタクシーで行くしかないが、タクシー代現金かカードでお前支払えるか?」
「クレジットカードは持っていないけど、キャッシュカードがあるから、あのコンビニでお金をおろしてくる。」
「あーそうかい。じゃあ、ついでにパンツを買って便所で履いてこい。」
「わかった!」というと、男はレストランから飛び出していった。レストランのお客はもうまばらで、ひっそりとしていた。
大仏男は何かをぶつぶつ言いながら、100円ゲーム機にお金を入れて遊び始めた。
「あ、おねーちゃんテーブルかたずけて。んで、最後にお茶ちょうだい」
「はいわかりました。あと、当店は45分で閉店になります。」
「まじ?じゃあ、30分後にタクシー来るように頼んでくれる?」
「かしこまりました」ウエイトレスは手際よくテーブルを片付けた。大仏男はまた100円ゲーム機にお金を入れて遊び始めた。そして15分ほど経過した。
「・・・待たせたな~。」男は色々入ったコンビニ袋をテーブルに置いた。
「んあ~。ここはあと30分ぐらいで閉店だ。ンでタクシー頼んだから来るまでここで待つか。」
「そうか・・・。あ、これ約束のお金」男は白い封筒を大仏男に手渡した。大仏男は中身を覗いた。
「・・・よくコンビニでおろせたな。今は20万しかおろせないだろ?」
「だから5回に分けた。それで時間がかかった。」
「あ~そうかよ。」大仏男は封筒をテーブルに置いた。
「どうしたんだよ!乗り気じゃないのかよ。俺の相手2日して70万も手に入るならばいいじゃないか!」
「あのな~。。。もしよ、お前が異世界もののチートキャラだったとしたら、こんな状況になったら喜んで行動起こすか?俺は眠くなってきたぞ。」
「・・・・・」
「俺は金じゃ動かないぞ。この状況は、まるでロープレの勇者がふらりと立ち寄った町で変なイベントに巻き込まれた感じに似ているな~。おらの村を助けてくんさいってやつ。」
「なにわけのわからないこと言ってんだよ。さっき俺に協力するっていたべよ!!!」
「あ~わかったわかった。だがな、もう一度約束事を言っておくぞ」
「色々細かいことはすっ飛ばすってことか?」
「それだけじゃない」
「他に何があるんだ?」
「それはな・・・」大仏男はソファーに座りなおした。
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