第3話 アイスクリーム

注文品は意外に早くテーブルに並んだ。

大仏男はすぐにナイフでハンバーグを細切れにしたと思うと、

男のことなど気にするそぶりも見せず、ご飯をがつがつ食べ始めた。

男は食欲があるのか無いのか自分でも良く分からない状態であったが、

アイスクリームを一口なめた。


「・・・おいしい」

男は不思議に思った。ただのアイスクリームなのに、

体がとても喜んで受け入れているの感じたのだ。

この感覚何かに似ている。子供の頃、少ないお小遣いで駄菓子屋で

買ったあのアイスクリームの味に似ている・・・。

あの駄菓子屋のばーちゃんまだ生きてるかな?

いや、生きていたら90歳ぐらいだから死んだよな・・・。

そういえばあの店に置いてあったジャンケンマンで

メダルたっぷり稼いだな~。小遣いが無くても投入口をひっぱたくと

タダで遊べたな。今考えると悪いクソガキだったな。

そうそう、その駄菓子屋の隣の家の娘、かわいかったな~・・・。

今は何をしてるのかな?多分、結婚してあの時と同じぐらいの

子供がいるんだろうな。なのに俺は今まで何をやっていたんだ・・・。

男はスプーンを加えたままうつむいた。

しかし、不思議と悲しい気持ちはでは無く、懐かしさが心を包んだ。


「おいおい、なにアイス食って悲しそうな顔してんだ?お前。」

大仏男は口に物が入ったまま男に話しかけた。

「いや、なんでもない」男はぼそりとつぶやいた。

「とにかく、出されたものは食え!話はそれからだ」

「はなし?」男は大仏男を見た。

「いいから食え!添え膳食わぬは男の恥だぞ!」大仏男がまじめな顔で言った。

「その言葉を今ここで言う意味がまったくわかんないんだけど」

男は鼻で笑いながらつぶやいた。

「いいから食えっての!ごほごほ・・・」大仏男は熱い味噌汁を流し込んで

目を白黒させた。

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