第173話 小さな卵
翌日、俺は真昼たちが来るであろう時間の少し前に白雪さんたちを自分の部屋に招いていた。
昨夜、真昼たちにも説明したが、素直に納得してくれた。
「うわあーーー!!!本がいっぱいだあーー!!」
俺の部屋に入るなり、真っ先に見えるであろう本棚を見て当然の反応を見せる。
ちゃんと真昼たちが帰った後に、タイトル名がちょっとエロいやつは見えないところに隠しておいた。
あいちゃんにそんなタイトルの作品を見せたら白雪さんに殺されてしまうかもしれない。
「おじゃまします……」
元気なあいちゃんとは対照的に、礼儀正しく入り、乱れたあいちゃんの靴を揃えていた。
あいちゃんは俺の本棚を見てテンションが上がったのだろう。ジタバタしている。
本来なら『下に住んでる人に迷惑だよ』と注意するが、下に住んでいるのは白雪さんたちなのでその必要もない。
「ねえ、見てもいい?」
あいちゃんが興味津々に俺の方を見て聞いてくる。
「別にいいけど、それは……」
あいちゃんの目線の先にあるのは明らかにラノベだ。
端に漫画が少しは置いているが、あいちゃんが見ているのは明らかにラノベだ。小学二年生が読めるようなものではない。
俺がラノベを読み始めたのだって小三ぐらいだし。
しかし、俺が言うのは及ばず、あいちゃんは一冊のラノベを取り出す。
取り出したラノベはソー○アートオンライン。かなり人気のバトル系の物語だ。アニメ化もしている。
主人公の○リトは仮想空間を楽しめるゲームを楽しんでいたのだが、そのゲーム内に閉じ込められ、デスゲームが始まると言う物語だ。
○リトの剣技がものすごく、アニメオタクになるきっかけとして挙げられる作品の一つだ。
でも、小学二年生の女子が読めるだろうか。
アニメならまだいけるかもしれないが、さすがになあ……。
あいちゃんは口絵やあらすじなどを軽く読む。
「これ面白そうだね。お兄ちゃん、これ借りてもいい?」
「ちょっと待ってね」
俺はすぐさま白雪さんの元へ向かう。
そして、小声で語りかける。
「あの、ラノベはちょっとエッチなシーンとかも出てくるんですけど、そんな本とかアニメって貸してもいいですかね?」
「まあ、森木さんは信用できますし、大丈夫です」
え?信用も何もどうすれば?!俺が選んだのならオッケーってことなの?!
まあ、流石にアニメに関してはヤバいやつは見せる気ないけど。
「あいちゃん、ラノベ読むなら今から貸してあげるアニメ見てみなよ。その本が元になってるアニメなんだ。とっても面白いから」
「うん、ありがとー」
流石にいきなりラノベを読んで興味を無くしてしまってはどうしようもないので、アニメから入らせようと考えた。
その後もおすすめのアニメやら何やらを教えていたら、扉の鍵がガチャリと開いた。おそらく真昼たちだ。
「あいちゃん、これから一緒にご飯食べる人たちだから安心してね。みんな優しい奴らだから」
その言葉を聞いた途端、あいちゃんは俺の背後に隠れた。
え?!人見知りって本当だったの?!
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