第93話 郷田……!

俺たちが遅れて登校したときは、もう2時間目もあと10分ほどの時間だった。


まずい……。やらかしてしまった。


くそっ!完全に忘れていた。俺と村瀬が一緒に登校しちゃダメじゃん。


俺たちが教室に入ったあと、授業中なのにも関わらずクラスでは何やら小さく騒いでいる。


「あの2人って付き合ってるの?」 「あの2人って同居してるの?」 「もしかして、あんなやつらなのに初体験したのか?」などなど、聞こえるのはさまざまだ。


おい!あんなやつらってなんだよ!俺にだって初体験ぐらいする権利あるからな!


そんな空気のまま、授業もあっけなく終わり、休み時間に入った。


俺は真昼の方を見た。少しでも言い訳をと思った。一ノ瀬はやっかいだが、真昼なら休み時間一つ有れば十分だろう。


しかし……、真昼は俺と目が合うどころか、下を向いて寝ている。もちろん、顔はしっかりと手で隠されて。


そのため、話しかけることが出来なかった。


昼休みになり、俺は郷田と昼食を食べる。ここで、ひとまず郷田には謝っとくか。とっさに一ノ瀬たちを騙すために郷田の名前使っちゃったし。


その言葉を発する寸前で郷田が話しかけてきた。


「なぁ京、お前って村瀬と付き合ってんのか?」


「えっ?!いや、そんなわけないだろ」


突然言われたからつい動揺してしまった。


でも、仕方ないじゃん。付き合ってはないけど、告白されたんだから。


「なんでそんなに動揺してんだよ。俺たちに隠し事はなしだろ?」


いや、いつ決まったんだよそんなルール。


「わかったよ……。絶対に他言禁止だからな?」


郷田はうんうんとうなずいたので、告白されたことは伏せて泊まったことを、泊まって勉強したことを話した。


「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!お前それまじで言ってんのか?羨ましすぎるだろ。どういった経緯だったとしても、男女2人でお泊まりとかやばすぎるだろ。それであれか?ドキドキハプニングがあったりしたのか?」


まずい……。郷田が興奮している。それに、声がデカすぎる。周りに丸聞こえだ。


「まぁ、ないと言えば嘘になるな。それと、声がでけえよ。誰かに聞かれたらどうすんだよ!」


「あ、悪いな」


そう言って、郷田は手で口を塞いだ。


「それと、ちょっと気をつけてもらいたいことがある」


「ん?なんだよ?俺にできることならいいぜ」


やっぱり郷田は頼りになる男だ。これでもっと優しいオーラだしたらモテると思うんだけどなぁ。


「あのさ、もしかしたら、一ノ瀬さんか宮下さんが、昨日何してたか聞いてくると思うんだ。そのときは、俺と遊んでたってことにしてくれないか?」


そう。ひとまず隣人ズにバレるのがいろいろとまずい。


質問される前にちゃんと言っておかないとな。


「あ、悪い。俺一ノ瀬さんから「昨日何してたの?」って聞かれたから、「1人で家でゴロゴロしてたよーはははははー」って答えちゃった」


なるほど……。おれの有罪の確率がほぼ100%になったな。


会話の途中、スマホが振動した気がした。


俺は手に取り、確認する。


あ、はい。俺には99.9%死刑が言い渡されるかもしれませんね。


『今日は5時には自分の部屋にいてください。1秒でも遅れたら殺します。』


一ノ瀬から送られてきました。

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