第59話 腕が……胸に……
「それじゃあどこから回ろっか」
このお出かけの発案者でもある一ノ瀬が俺たちに聞いてきた。
「私はどこからでもいいよ」
「同じく」
俺は特に回りたいところもないので、真昼に同情した。
「それなら、私が今日したいことを言ってもいい?文句とか言わない?」
俺と真昼は頷く。
「それじゃあ……、今日行きたいところとしては、まずは服屋さんに行って服買いたいし、アクセサリーとかいろんなところ回りたいし、あ、それと今やってる映画あるんだけど、それも見たいかな……」
なぜさっき俺は頷いてしまったんだ。
今になって後悔している。
いや、流石に買い物って言っても服を買うだけだと思ってた……。
いや、アクセサリー?聞いてねえよ!さらになんだ、映画?なぜ俺がいるときに見るんだよ?!真昼と2人で見とけよ!
さすがに舐めていた。
これが「JK」と言われる女子高生のお買い物なのか……。おそるべしJK。
「いいよいいよ。私も映画行きたいし。京くんもいい?」
「あぁ、もう、今日はお前たちについていくから勝手にしろ」
諦めた。JKを相手にしてしまったことがだめだったんだろう。
「ありがと」
それに、こんなにかわいい奴らと一緒に居られるなら、どこでもいいと思えてしまう。
「それじゃあ、まずは服屋さんから行こっか」
そう言って2人は元気よく歩き出した。その2、3メートル後ろで俺もついていく。
なんか隣に歩くのって緊張するんだよな。
そのことに気づいた一ノ瀬は、真昼に何か話しかけた。
なんだろう……。一ノ瀬の言ったことに真昼は少し顔を赤くしている。なんかやばいことでも考えているのだろうか。
その後、真昼は頷き、何かを覚悟したようだった。そして、一ノ瀬と真昼は俺を挟むように道を開ける。
何をする気だ……?えっ?
「な、何してんだ……」
一ノ瀬と真昼が右左それぞれの腕をとり、自分の胸に当ててきた。
電車では、隣にいただけて身動きが取れなかったのに、今、俺の腕が……、おっぱいに……当たってる……。
俺はどうすればいいんだ……。おっぱいが……おっぱいが当たってるのに俺はどうすればいいんだ?
へんに動いたら、セクハラになるんじゃないか?
俺は何をしているのか、どんな意図でこのようなことをしているのか聞くことしかできなかった。
「いや、京くんがわざと私たちの後ろを歩いてたから、拘束しようと思って。今日はいっしょにお出かけにきているんだよ?ずっとこのまま拘束されながら歩くか、私たちの隣を歩くか、どっちがいい?まぁ、変態な京くんなら前者を選ぶのかなぁ?」
「と、隣歩くから!隣歩くからひとまず離してくれ」
俺はすぐに後者を選んだ。
その理由は二つ。
一つは、電車の時同様に、緊張してまともに話すこともできない。
二つ目は、俺の視線の先にある。
俺の近くを歩く人たちは、必ず俺のことを見る。さらに言うと、なんかめっちゃ睨まれてるきがする。特に男の視線は怖い。なんか、殺意がむき出しなんですけど。
「仕方ないなぁ」
一ノ瀬は俺の腕を解放してくれた。それを見て、真昼も解放した。
「それじゃあ、レッツゴー!」
電車から降り、ショッピングモールに行くだけの間に、こんな事件があったのだった。
[+小説] 一ノ瀬と真昼の会話
「ねぇ、まっひー、京くんが私たちと離れて歩いてるんだけど、一緒に歩きたいよね?」
「まぁ、歩きたいは歩きたいけど……策とかあるの?」
くるちゃんはニコリと微笑んだ。
「強制的に、私たちの隣を歩かざるを得ない状況を作ればいいんだよ」
「そんなのどうやって?」
「京くんの腕をおっぱいにあてる。そして、拘束する?そして、『やめてほしてれば、隣を歩け』って言ったら絶対に歩くはずだよ。一応私たち、おっぱいでかいし、あるものはちゃんと使っていかなきゃね」
け、京くんの腕を私の胸に……。
そんなことできるのかなぁ。めっちゃくちゃ恥ずかしいよ……。
「京くんに振り向いてもらうんでしょ?」
そうだよね。少しぐらい頑張らないなくちゃダメだよね。
「でも、もし解放してくれって言わなかったらどうするの?」
「その時は、その時だよ。その時は頑張ろう」
本当に大丈夫かなぁ……。
いや、ネガティブなことばっか考えててもダメだよね。
覚悟を決めるぞー!
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