第60話 服屋
俺たち3人は、大きなショッピングモールの前に立っている。
「それにしても、でけーな」
そう。このショッピングモールは、かなりでかい。
ちゃんと映画館もついてるし、施設としては完璧だろう。
「そうだね。それじゃあまずは服屋さんから回ろっか」
一ノ瀬が先導し、その隣を俺と真昼が歩く。
俺たちは、ここにくるのが初めてなのでマップを見ることにした。
一ノ瀬はマップを見ながら服屋を確認する。
「へー、このショッピングモールの中だけでも服屋さんが8軒もあるよ。私たちの街だったらこんなにも服屋さんないからテンション上がるよね」
「そ、そうだな」
えっ?何がテンション上がるんですか?一つのショッピングモールに服屋が8軒も必要ですか?一つあれば、多くても2、3軒あればいいでしょ。自分はテンションが上がるどころか下がってるんですけど。
「それじゃあ一軒ずつ回って行きますか」
嘘だろ……。まさか……、この8軒全部回る気なのか?
体力が持つ気がしません。
俺は一ノ瀬と真昼が歩く方に歩く。
はじめについたのはユニシロだ。
いや、ここに来てまで行くようなとこじゃないでしょ。
ユニシロは大手も大手。
俺たちの家の近くにもあるし。
しかし、俺の考えとは違い、一ノ瀬と真昼は中に入っていく。
俺はふと思った。
俺って、中までついていかないといけないのだろうか。
こういうのって女子だけの方が楽しめるんじやないか?
うん。きっとそうだな。それなら俺は近くのベンチにでも座るとするか。
俺が2人から離れようとした時だった。
すぐさま一ノ瀬は俺の手をとる。
俺は、ドキッとした。
女子に、しかも好きな子に手を握られるのはやばい……。
「京くん、どこいくの?」
「いや、こういうのは女子2人で楽しんだ方がいいんじゃないかと思って、俺はベンチにでも座ろうかと……」
「逃がさないよ。はい。ついてくる」
そう言って、俺を引っ張っていく。
あぁ、なんか青春してるな。
そして、俺は服を見さされている。
しかし、全く興味がないのだが。
俺は黙って2人の買い物を近くで見守るだけ……。
それなら、ベンチで座っててもいいじゃん!
頭の中でそんな文句を言いながら俺は黙っている。
「ねえ、京くん、まっひーどお?」
「えっ?」
俺の頭は買い物に興味がなかったので、全く一ノ瀬たちのことを見ていなかった。
頭の中にあったことといえば、文句とらのべやアニメについてだ。
なので、俺は一ノ瀬の声に反応することしかできなかった。
「このまっひーを見てどう思う?」
この真昼?どういうことだ?
俺は少し見渡すと、そこには来た時と服装の違う真昼の姿があった。
「この服、どうかな……?」
真昼は俺に聞いてきた。
どうと言われても……
「めちゃくちゃ似合ってると思うぞ。真昼は可愛いんだから、どんな服でも似合うんじゃないかなぁ」
俺はちゃんと思っていることを正直に話した。
真昼は、俺の見てきた中で一番照れている。
顔は真っ赤である。
まぁ、仕方ないか。好きな人じゃなかったとしても
「可愛い」って言われたら女の子は嬉しいのだろう。
言っておくが、俺は「カッコいい」なんて言われたって動じないからな。
「そ、それじゃあ私、これ買おっかな」
真昼は試着室に戻って来ていた服に着替えてから、それを持ってレジに向かった。
「そんなのでよかったのか?言っておくが俺はファッションセンスとかないからな」
「うん。大丈夫だよ。私はこれを買いたいって思ったから買ったんだよ」
「そうか、それならいいけど」
真昼が買いたいなら俺が口出しする必要もないか。
「で、次はどこにいくんだ?」
「ちょっといいかな?提案なんだけど、私たちが京くんの服を選んであげるってのはどうかな?」
「それいいね」
また、一ノ瀬が発案し、それに真昼が同意する。
「まぁ、俺はどっちでもいいけど……」
逆に断る理由も浮かばなかった。
「それじゃあ、決定!よーし。選ぶぞー!」
こうして、オシャレで美人な2人が、ダサくてブサイクな俺の服を選んでもらうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます