第44話 地獄の特訓

放課後、俺たちはいつも通り、スーパーに寄って、部屋に帰る。


そして、いつも通り米を炊く。


いつもは、そこから米が炊けるまで話をするなど、自由な時間を過ごしていた。


しかし、今日は違う。


俺たちは、米が炊けるまでの約1時間、走ることになった。


この提案をしたのは、もちろん我がクラスの学級委員長の一ノ瀬だ。


どうせ朝練の時に言っていたのは冗談だろうと思っていたが、こいつは本気だった。


炊飯器のスイッチを押すと、すぐさま走ろうと言ってきた。


その時の俺と真昼の顔は、全く同じだった。


その顔は、これから地獄を味わうことを全面的に予言した顔。


その予言は見事に命中する。


俺たちは、1時間もの間、ほぼ休むことなく走り続けた。


本当に地獄だった。


唯一地獄ではなかったことといえば、一ノ瀬や真昼の胸の揺れを間近で見ることができたぐらいだ。


それは本当にすごかった。


どこがすごいかというと、二人は体操服を着ていた。そして、その胸は上下に動く…動く。


二人三脚の時の真昼もかなりのものだと思ったが、走っている時の二人はすごい。


そうだな…、言い表すとするならば…、プリン!


そう!プリンだ!


あんなにプリプリしたおっぱいには、そうそう出くわすことはないぞ…。


それに、俺は見つけてしまった。


真昼が…、あの真昼が、一ノ瀬に勝っている部分…。


そこは、おっぱいのデカさ!


一ノ瀬もおそらくクラスでトップ5には入るだろうが、真昼は余裕で一位だろう。


ほんとデカイ。


あ、可愛いのも真昼かも。


まぁ、俺は一ノ瀬推しだがな。


悪いが俺にはそれぐらいしか見つけられることが見つけられなかった。


アニメとかで興奮していた光景が本当に現実に現れた。


少し感動した。


しかし、俺は気がつく。


こうやって、ずっと胸だけ見てたら一ノ瀬に気づかれて、あとで絶対からかわれる。


まぁ、からかわれるのが嫌というわけではないが。


そのからかわれ方が、「おっぱい」なのが嫌なだけだ。


その後は、なるべくおっぱいは見ないようにしながら走った。


隣には余裕で元気よく走る女の子と、今にも死にそうな女の子がいる。


そして、俺がいる。


なんとか、走りきった。


俺と真昼は、まともに呼吸ができない状態だ。


しかし、もう一人の女は違う。


もう一人の女は、まだピチピチしている。


まぁ、俺たちにペースを合わせてくれてたし、しんどくはないだろうが、普通少しは息切れるだろ!


なんか悔しいな。


俺たちは走ったあと、歩きながら俺の部屋まで帰る。


帰ると、まだ元気な一ノ瀬がご飯を作ってくれた。


最近は、俺もご飯を作れるぐらいになり、朝ごはんぐらいは作ったりもしている。


さすがにお弁当を作ることはできないが。


それにしても、最近不思議なことがある。


夕飯を食べたあと、一ノ瀬と真昼はすぐに帰る。


いや、実際には帰ってはいない。


おそらく真昼の部屋に行っている。


なぜ俺だけを抜いて真昼の部屋に行くんだ?


も、もしや…、俺に毎日洗い物をさせるための作戦?!


それなら、どうしよう?


その後も、約二週間、毎日同じような日々が続いた。


平日は朝練、放課後練習、そして、謎の一ノ瀬、真昼逃亡事件。


休日は朝から公園で二人三脚。


なんか、何も変わらなくて、つまらなくなってきたな。


って、もう明後日には体育祭当日じゃん!




私は今、必死に修行している。


そう。これも、京くんに振り向いてもらうため。


「違う!もうすこし焼かないと!これじゃ形が崩れちゃうよ」


「あわわわわーーー」


「落ち着いて、やるときは必ず落ち着いてやること!できないなら、諦める!どうするの?!」


「や、やります!」


私は絶対に諦めない!


その理由もある。


この学校の体育祭にはある噂がある。


そのためにも、この体育祭で必ず京くんに振り向いてもらわなくちゃ!


「はい、今日はここまで。あとはこれの処理だね。がんばろ…」


「あー、もう、だんだん飽きてきたよ…」


「それならやめる?」


「やります!」


その後も、二週間、必死に修行した。


って、もう明後日には体育祭当日じゃん!


やばいよー!大丈夫かな…。

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