第34話 選択肢
買い物から帰ってきて、今は炊飯器で米を炊いている。
「そういえば体育祭のことだけどさ、京くんは出たい種目とかある?」
ここで特報。
中学生の時、クラスのグループラインに入れてもらったことのない俺が、高校一年生の今、人生ではじめてのグループラインに入れてもらっている。
そう。それもこれも全部一ノ瀬のおかげだ。
ほんとにからかわれることがなければ最高なのにな。
で、でもからかわれるのが嫌だって言ってるわけじゃないからね。
俺はグループラインを開き、どんな種目があるのかを確認する。
「んー、そうだなー、玉入れとか楽なんじゃね?」
そう。俺はいつも特に盛り上がらない競技、もしくは得点に入ることのない競技だ。
正直楽しんだ記憶がない。
俺は特に盛り上がらない競技を言った。
その言葉に返事をしたのは一ノ瀬だった。
「えー、そんなのでいいの?私はリレーとか盛り上がりそうなやつでようと思ってるよー、京くんリレーやろうよ」
この時の一ノ瀬はいつものからかいムードというわけではなかった。
本当にリレーに誘っているようだった。
「いや、俺なんか盛り上がる競技入る価値とかないし…」
「そんなことないよ!それじゃあ私かまっひーのどちらかと二人三脚でもする?」
「それをして次の日生きていられるか心配になりそうだよ」
そうだ。一ノ瀬に名前を呼ばれただけでも死にかけたのに、二人三脚?!ふざけすぎだろ。
「ピピピー」
どうやらお米が炊けたようだ。
俺と一ノ瀬は料理教室へ。
ひとまず、チャーハンを作ることができた。
そして食べながら先ほどの続きを話し始める。
「それで、私とまっひー、どっちを選ぶの?!」
「いや、やめろよ、なんか二人同時に告白されたみたいじゃん。まぁ、やるならどっちでもいいけど」
嘘だ。やるなら一ノ瀬とやりたいに決まっている。
「なんだ、やることは決まったんだー、京くん意外と正直だね…」
(よし、このままいってどうにかして京くんとまっひーを一緒に二人三脚させるぞー)
「ち、違げーよ!もし、もしやるならだから!」
「またまたー」
ちょっと悪魔モードになったか?
「じゃあ、もしやるならどっちがいい?」
一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬一ノ瀬………
「どっちでもいいし」
言えるわけねーだろ!言ったら告白みたいなもんじゃん。
「それなら明日まで待つから明日に教えてね、私か、まっひーか」
「だからその言い方やめろって」
一ノ瀬はニシシと笑う。
飯を食べ終えると、もう19時を回っていた。
「そろそろ解散にするか?」
「まぁ、そうだね。勉強とかもしないといけないし」
「「えっ?毎日勉強してるの」」
久しぶりに喋ったと思ったら俺とシンクロしたんじゃねーか!
「まぁ、その日の復習ぐらいは、でも、ちょっとだけだよ」
さすがだな。
たしかにやるときはやるとは思っていたが、想像以上だ。
感心感心。
「すげーな。まぁ、それなら気にせず帰ってくれて構わないぞ。また明日な」
「うん。また明日。まっひーもバイバーイ」
「バイバーイ、それじゃあ私もそろそろ自分の部屋に戻るね」
こうして今日の夕食会はお開きとなった。
(オリジナル小説)
4話 京と一ノ瀬の料理教室
「それじゃあ始めるよ」
「よろしくお願いします、師匠!」
こうして俺の料理教室が始まった。
「それじゃあまずは、フライパンにごま油をひいて、そこに卵を割ろうか」
「はい、師匠!」
「まずは私がやるからみといてね」
そう言って一ノ瀬は卵の割り方を教えてくれた。
なんか軽くキッチンの角に卵をぶつけ、パカッだ。
やってみよう。
軽く軽く…
「コンッ」
よし音がなった!これで割れて…ない。
何故だ?卵が割れていない。
「もっと強くしないと卵は割れないよ」
なるほど、強く強く…
「ガバッ、ベチャッ」
俺のぶつけた卵は、ひびで止まることなく、完全に割れ、潰れた。
ボールがないという理由でフライパンに入れたため、フライパンに卵の殻が少し入った。
しかし、一ノ瀬が綺麗に取ってくれた。
そしてそれを溶き、卵に火が通るまで中火。
「それじゃあそろそろお米を入れよっか」
俺は言われた通りに米をフライパンに入れる。
そして、強火にしろと言われたので強火にする。
そして、全体に味をなじませる。
このなじませる作業は普通は一番難しいらしいが、俺にはこれが一番簡単だと感じるように、上手くできたと自分で思う。
そして皿に移…
「あ、皿ねーわ」
「何してんの…、まっひー、悪いけど昨日のオムライス入れたお皿持ってきてくれないかな?」
真昼は「了解」と言ってた部屋を出て、約1分で帰ってきた。
そこにチャーハンに盛り付ける。
そして小ねぎをかけて完成だ。
「よっしゃーできたぞー!」
俺たちはチャーハンを口に運ぶ。
「「「うっまー」」」
まさかの3人シンクロ!
それぐらい美味しくできた。
一ノ瀬に少し手伝ってもらったとはいえ、俺が人生ではじめて作った料理。
美味しくできてよかった。
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