第24話 洗濯講習会

「きたな…」


真昼の部屋を開けて一ノ瀬が発した最初の言葉。


おいおい、感情がそのまま出てるぞー!


「意外と宮下さんって掃除とか苦手なんだね?」


いや違う一ノ瀬。


あくまで俺の推測だが、こいつは何もかもできないのだと思う。

俺の知る限り、洗濯もできないし、おそらく家事全般ができないのだろう。


「ま、まぁね…、は、ははははは…」


真昼は苦笑いで答える。


このままじゃ進まないな。


「よし、それじゃあ始めるぞ一ノ瀬!」


「えっ?私は?」


「そうだな…んー、そうだな、これからのことも考えて、洗濯のやり方でも教えるか。それじゃあこっちきて」


「なんか邪魔モノ扱い…。ってか、洗濯ぐらいやり方わかるもん!」


「それじゃあやってみて」


「任せてよね!」


なんか嫌な予感しかしない。


こうして、俺と真昼は洗濯機のある洗面所へと向かう。


さあ、見せてもらおうかね。そこまで自信があるのなら。


「それじゃあ」


そう言って真昼は何をするのかと思えば、真昼はいきなり洗濯物を洗濯槽に入れ出した。


そして入れただけなのにこちらにドヤ顔をする。


「ほらね?できるでしょ?」


「お前、洗濯したことあるのか?」


「えっ?!」


「お前今入れたやつの中に下着とか入ってるだろ?下着とかは洗濯ネットに入れるんだよ!」


「せ、洗濯…ネット?」


「まじか…まさかここまでとは…」


「そんな、捨てられた子犬を見るかのように見ないで!で、でも私…洗濯ネット?なんて持ってないんだけど?」


「はぁ…、このあまり家事ができない俺にため息つかれるって相当だぞ…。まぁ今日は俺のを貸すから。少し待ってろ」


だんだん俺の真昼への対応が変わっていく。


俺は一旦自分の部屋に戻り、洗濯ネットを取り、再び、汚物ハウスへ。


「ひとまず…洗濯ネットに下着を入れろ。それと…、洗濯物を入れる前に洗濯機のホースを蛇口に繋げる。お前のやつ外れてるぞ?」


「あ、そうだったー。今からはめようと…。はい!これでオッケー…でしょ?!」


真昼は自身の下着をネットに詰め、洗濯物を入れる。


そしてなぜか真昼はドヤ顔。


バカだ。


「はぁ…、お前、自分信じすぎなんだよ。少しはまだやることはないか疑え!」


「えっ?でも今言われたことはいけたでしょ?だからこれから洗剤を…」


「じゃ!ぐ!ち!ゆるめたのか?水出ねーぞ?」


「いや、それはこれから…、すみません…」


真昼は泣きそうになりながら蛇口を緩める。


「できないなら、できないって言えよ。怒ってるわけじゃないんだから。無駄に適当にやられる方がこっちもイライラするんだよ」


「わかりません…。それと、怒らないで…ください…」


「うむ。はじめっから素直になれよ…。まぁ、これからは洗剤と柔軟剤入れてボタン押すなんだけどな」


「それならできると思う!」


そうして真昼は洗剤を手に取った。


さすがにもう間違えることなんて…まじかー!


「わりーわりー、言うの忘れてたな?洗剤とかにはちゃんと入れるとこがあってな。ここ、ここ。柔軟剤はここな。よし、そこまでやってみようか?」


「うん…。なんか幼稚園児ぐらいを相手にしてるかのように話されると、本当に悲しいんだけど」


「いやいや、三歳児ぐらいのつもりだよ?」


俺は笑顔で答える。


真昼は泣きそうになりながら作業をする。


それを俺は見てあげる。


「よくできましたー!これをできるなんてすごいね?!それじゃあふたを閉めて、開始のボタンを押してみようか」


「逆ギレしたいけど、できないのが現実…。くっ」


そして、真昼はやっとの事で洗濯機をスタートさせることができた。


「終わったー!」


「まだ洗濯が!だけどな」


「あはははは……はぁ…。これからが本番かぁ…」


「まぁ頑張ろうぜ!」


「うん!」





「ふむふむ、なかなかいい感じじゃないですか?」


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