第25話 大掃除開始?
俺たちの大掃除はやっとの事でスタートした。
「ごめん一ノ瀬さん。何かしてた?」
「えっ?あぁ、適当にこの部屋を眺めてた…かな?」
(あんた達のラブゲームを見てたなんて言えるわけないでしょ!)
「そうか、それじゃあ始めるか!」
「よーし、やるぞー!」
「おーー!」
女子勢の胸がたぷりと揺れる。
10分後
「これは…、これは…、あーもーむりー!」
まぁ、こうなることはなんとなく予測できた。
まずはこのゴミをなんとかしようと、いらないものをゴミ袋に入れろと言った。
はじめは小さな箱とかを入れていたので順調なように見えたが、それは一瞬にして終わった。
「なんでダンボールとか捨てないんだ?」
「だって…、ダンボールとかって組み立てたら何にでもなるじゃん?例えば…、ゴミ箱とかにもできるし」
「そのダンボールでさえ、今はこのゴミ屋敷の一部分を担っているのだが?」
「…………」
「それがこの部屋がゴミ屋敷になる理由なんじゃないのか?自分で捨てるのはできないと?それなら作戦がある」
こくりと真昼は頷く。なので俺はその作戦について述べた。
「今から30分だけ時間をやる。その間に、本当に大切なもの、どうしても捨てられるとまずいものをこのダンボール詰めろ。そして、それが終えたら真昼は昼までこの部屋に入ってこれない。そして、真昼がいない間に俺と一ノ瀬さんで掃除する。どうだ?」
この案に賛成したのは真昼ではなく一ノ瀬だった。
「それはいい考えかもしれないね。一応私も女子だし、本当に必要なものぐらいはわかると思うし。任せてよ!」
真昼は少し嫌な顔をしたが、さすがに師匠である一ノ瀬が任せてと言われてしまえばどうすることもできない。
これが師弟関係なのだ。
「一ノ瀬さんがいうなら…、でも私は何してればいいの?」
それもそうだろう。
これから2時間ほど、ここから出て行けと言われているのだから。
「そうね…、あっ、それじゃあおつかいでもたのもうかな?」
一ノ瀬は案を出した。
「うん!なんでも任せてよ!」
嫌な予感がするのは俺だけだろうか?
「宮下さんって料理は得意?得意じゃないのなら今日のお昼ご飯は私が作ろうと思うんだけど」
一ノ瀬の料理。食べたくても食べれないやつの方が多いんじゃないか?
そう考えると俺は幸せなのかもな。
「お言葉ながら…、苦手というか…料理はほぼしたことがないと言っても嘘にはならないかも…」
真昼は少し恥ずかしそうに言った。
師匠にバレたのがよほど恥ずかしかったのだろう。
「それじゃあ今日は私が作るよ!」
なんか真昼には悪いが、よくやった。
一ノ瀬の飯なんて食ってみたいに決まっている。
一ノ瀬はそう言って真昼の部屋の冷蔵庫を開けた。
そこで俺はある共通点を見つける。
弁当たくさんあるじゃーん。
どうやら真昼も俺と同じようにスーパーの弁当で食問題は解決していたらしい。
俺は少し嬉しかったが、一ノ瀬はこの冷蔵庫を見て目が点になっていた。
おそらく絶望しているのだろう。
「こんなに不必要なものしか入っていない冷蔵庫を見たのは初めてだわ…」
おいおい、口から出てるぞー。
「まぁ何もないのならお手軽に作れる料理…、そうね、今日はオムライスにしましょう。それなら…」
そう言って一ノ瀬は、そこらへんに落ちている紙を一枚拾い上げ、ペンで書き始めた。
おそらくオムライスを作るのに必要なものが書かれているのだろう。
一ノ瀬はある程度書いた後、突然思い出したかのように真昼に聞く。
「宮下さん?フライパンってこの家にある?」
「ないよー」
ないよーじゃねえよ!この言葉が一ノ瀬を見れば分かる。
一ノ瀬は書き終えた紙に再び書く。
ほぼ100%「フライパン」という文字だろう。
「フライパンはひとまず安いやつでいいわ。また今度一緒に買いに行きましょう」
あたりだった。
そう言って先ほどまで書いていた紙を真昼に渡す。
もう一度だけ言うが、嫌な予感しかしない。
渡すと、一ノ瀬は「任せてよ」と言って、部屋を出た。
「よし、やるか?」
「そうね、やりましょう」
こうして本当に大掃除がスタートした。
この部屋の家主を抜いて。
「そういえば…宮下さん、大切なものしまうんじゃ…」
「「あ、」」
「知らん!とても大事なものなんてないんだろう」
こうして二人の大掃除は改めて始まった。
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