第10話 ゴブリンは化け物を見た
俺は『暗夜の森』に住む、しがないゴブリンだ。
ただ一匹、群れから追い出されて世界中を彷徨っている。
弱い弱い最弱魔獣の中の最弱。
俺はなんのために生きているのだろう、そんな自問自答の日々だ。
意外に食料豊富で穴場だったこの地も・・・もう潮時か・・・
森の奥に『奴』が住み始めたからだ。
奴は森の奥から出てこない。ただ獲物が罠にかかるのを待っている。
幸いにも、俺の住処は森の外れ今のところは無事である。
夜半過ぎ、
俺はふらふらと出歩いていた。
森の外れ、空が良く見えて月が綺麗だった。
この先には背の高い大木が生えていたが、
奴に倒されてしまった。
なんて恐ろしい。
もうここには見切りをつけて違う土地に移った方がいい。
ふと、その倒された大木が動いているように見えた。
木が動く・・・だと?
1・・・2・・・3・・・
29・・・30、もうワンセット
木が横に上下している。
いや、下に『何か』居る・・・
ヒト?
大木を担ぎ上げたそれは、膝を上げ下げして数を数えているように見える。
なんだ・・・あれは何をしているんだ・・・
ヒトというのは常に奇妙なおこないをするものだが、
あれは特にネジが外れているじゃないか
木を持ち上げて腕を曲げたり伸ばしたり、
木に足を引っかけて逆さにお辞儀をしてみたり、
1・・・2・・・3・・・
29・・・30、もうワンセット
なんだこいつ
いつまで続けるつもりだ。
その鬼気迫る圧迫感と異常な雰囲気に
俺は目を離すことができないでいた。
それは後で後悔することになる大きなミスだった。
「?」
こっちに・・・気づかれた・・・
(肉?)
ぞっと・・・
悪寒が走った。
直感的に理解した。
アレは俺を見て、
「喰えるか喰ええないか」としか見ていなかった。
俺は走った、アレの恐怖から逃れるために一目散にだ。
一晩走り続けた。
朝日を見た時、自分がまだ生きていることがわかった、その場に膝まづく。
涙が止まらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます