15話 ブラックウルフ
「はぁ。今日居眠りして恥かいたばかりなのに」
私は昨日に引き続き真夜中の山に繰り出していた。寝不足で本当は依頼を受けたくなかったのだが、皆も依頼があるので代わりにやってくれる事はないし、依頼料を上乗せするとまで言われたら断るに断れない。
因みに今日の依頼は昨日と同じく魔術師たちの護衛である。ただ昨日と違うのは人数が昨日より2人程増えた事である。
「はぁはぁはぁ」
それにしても2日も連続で山に入るなんて、何をするんだろう?昨日は結局うろうろ歩き回っただけだけど。
「はぁはぁはぁ」
今日は数が増えているし。まぁ、あくまで私の依頼は彼らの護衛だからそこは気にしない方が良いのだけれど。
「はぁはぁはぁ」
「・・・って、うるさーい!」
「ふぁぁ」
さっきからはぁはぁうるさいと思ったら私の前を息を切らした女が歩いていた。
彼女は護衛対象の魔術師だ。だけどここまで息を切らしているとは新人なのかな?
「ごめんなさい。普段はこんなに歩かないので」
「すみません、亜加里さん。この子は協会の研究員なんで大目に見てやって下さい」
私が大声を出した事を怒っていると勘違いしたのか息を切らした女と筋骨隆々の男が謝ってきた。
私は別にちょっとツッコんだだけで怒っている訳ではないのだが。
確か魔術協会の研究員って施設に引き込もって魔術の研究をしているんだっけ。
「分かった、分かったから。別に怒ってないよ」
私が怒っていない事をアピールすると2人はホッと胸をなで下ろした。心なしか残り2人の魔術師も安堵したように見える。
「じゃぁ、
「ふぇ?」
「だって歩き慣れてないんでしょ?」
「そうですけど、良いんですか?」
「えぇ。これも仕事の内よ」
それに護衛対象が疲れていたら、いざと言う時に守り辛いからね。
「ぅぅ。お願いします」
「はい。任されました」
◆ ◆ ◆
「グルルル」
それから歩く事約1時間、私達はブラックウルフの群れに遭遇していた。十数匹はいると思われる大群である。
「っ!」
「嘘でしょ」
「あわわゎゎ」
「やはりか」
それに対し皆一様に驚いたり怯えたりしている。
この流れだと昨日と同じように撤退って事になるけど、そう思い私はリーダーである筋骨隆々の男を見た。
どうやら昨日とは違いブラックウルフに対し完全に逃げ腰と言う訳でも無さそうだ。何となくそんな顔をしている。
「よし、 作戦通りに行くぞ」
男の掛け声に他の3人も気を取り戻したのかただ怯えているだけで無く覚悟を決めたような顔付きになった。
はぁ、これはちょっと下手には手出し出来ないわね。依頼内容からして。
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