90 №3‐1『史記』に登場する人物<武帝>



『史記』に登場するいい男たち、前回の作者の司馬遷に続くのは武帝です。

 武帝は前漢の7代目の皇帝で、司馬遷が仕えた皇帝です。


 ところで武帝という名は、彼が亡くなったあとにつけられたおくりなです。


 それから、おくりなの字は、皇帝生前の功績によって決まることが多かったので、おくりなで皇帝の功績が偲ばれます。


 武は、戦いに強く領土を広げた皇帝です。

 そして、哀・紂・幽とかの文字が使われている皇帝は、治世はよくなかったイメージです。




 前漢の武帝は偉大で魅力的な人であったらしく、彼を主人公にした読み物がいくつかあります。


 『史記』の講座の先生のお勧めは、吉川幸次郎『漢の武帝』と永田英正『漢の武帝』でした。87話で戴いたコメントでは北方謙三も、そしてまた吉川英治もその小説の中で触れているようです。


 しかししかし、『史記』の講座に長く通っていながら、皇帝という存在そのものには、偉大であろうがなかろうが、最近の私はあまり興味をひかれません。


 そもそも『中華統一』の掛け声とともに繰り広げられる国盗り物語にも、いまはあまり食指が動かなくなりました。後宮ものもカクヨムで書き始めたころにはいろいろと読んでみたのですが、いまはあまり興味をひかれません。


 一時期は、そういうものを本でよく読み、テレビドラマもよく観ていて、知識もそれなりに頭の中に溜め込んでいたのですが。なんか、卒業っていう感じです。


 私は中華ファンタジーを書いていますが、登場する人物たちは、任侠の大親分だったり寡婦のおばちゃんだったり、呉服商や古物商の商売人だったり。

 市井で暮らす人々が大半です。


 どうしてだろうと考えて、「そうだ、いまの江戸を舞台にした時代劇小説は、捕り物を軸とした市井の人情ものが大流行りだ」と気づきました。


 書店で本を買っている中高年のおじさんおばさんの好きなジャンルは、織田信長や徳川家康の戦国ものでもなく、また大奥の女の嫉妬でもなく、町中で暮らす同心・商売人・職人の人情物語なのです。


 私があえて古代中国を舞台しながら、市井に暮らす人を主人公に据えるのはその影響だろうと思います。


 いま大人の読者向けに中華ファンタジーを書くのであれば、日本の時代劇小説と同じく市井で暮らす人々の人情ものだろうという考えが、自分の頭の隅にあるのだろうと気づきました。


 であれば、初めから時代小説を書けよということになるのですが。


 ぶっちゃけ正直な話、いまさら、あの時代の同心や町民の暮しを調べるのも面倒だと思うし、それに中華ファンタジーにして神さまを登場させると、ストーリーの整合性がいびつになっても誤魔化せるしと、姑息な計算もあります。


 



(注意としてのお願いです。この『史記』に登場するいい男たちシリーズは、いろいろな媒体から得た知識をもとに、私の頭の中で渦巻く妄想・偏見・独断で味付けしたものです。史実とは異なっていることがあります)



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