運命少女は傷つかない
雅塵
第1話
いつもの帰り道を一人で歩いていく。
俗にいうなにもない田舎町で、私は14年目の人生を歩んでいる。生まれてからこの地を離れたことはない。どこにでもいる普通の女子高生で、今もこれからも世間一般からみて「普通」の人生を謳歌するのだと、あの頃は漠然とそう思っていた。
—あの病に振り回されるまでは。
運命論、というものがある。
世の中の出来事は予めそうなるように決定していて、人の努力などでは捻じ曲げられないという考え方、或いは論述。
ここ10年でこの論述に関連する、とある病が急速に流行し始めた。
通称「運命病」
端的に言えば、この病に罹った人は運命論者的思考に陥りやすくなり、どんな苦境に立たされても、解決策を見出すことなく「こうなる運命だったんだ」の一言で完結してしまう。一種の精神病に近い。
流行当初は運命病に関するニュースで持ち切りで、様々な意見が飛び交った。
運命病は甘えだの、医学的に全く証明が出来ない不確実な事象だの、まぁ大体が罵詈雑言だった。
かくいう私も非難する側だったのだが。
流行とは廃れるのも早いもので、ここ数年はテレビで見かけることもごく稀だ。
さて、簡易的に説明をした。つまるところ、運命病を発症する人というのは根本的に解決することが出来ない問題。かみ砕いて現代風に言うならば「闇」を抱えている。つまり、私も何か途轍もない闇を抱えていないとおかしい筈なのだが、あいにくとそこまで思いつめる悩みもない。
毎日、なぜこんな病気に罹ってしまったのか自問自答する日々。
学校からの下校途中、一人になるとこういった無意味な思慮を巡らせている。
多分、こんなことばかり考えているから、運命病という悪い虫が入り込んでくるんだろうな、と、堂々巡りの思考に終止符を打つ。
「う、寒い」考え事をしている時は気が付かなかったが、今日は一段と冷え込んでいる。季節は秋から冬へ移行しかけている最中だが、冬用の制服だけだと心もとない。明日からは何かしらの防寒具を着用していこう。
と、思っていた最中だった。
人気のないこの一本道で、前方から怪しげな人影が迫ってくる。
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