本日付けで、僕は神使になります。

月香玖耶

プロローグ

────神社。


それは、神々に日々の感謝を伝え、祈りを捧げる場所だ。

神社に訪れた人々は、神に祈りを。

人々の祈りや願いを聞いた神は、その参拝者の願いを叶える。

これは、日本がまだ発展する前、はるか昔から伝わる、ひとつの文化でもある。

この文化は、時代が変わっても、決して変わらなかった。

しかし、近年になって、人々の祈る機会は、以前よりも減少した。

なぜなら人々は、神々が起こす神秘的な奇跡よりも、あらゆる事象を証明することで起こす奇跡…言わば、《科学》を、全面的に信じるようになったからだ。

これにより人々は、『願いは叶わない』

『神様なんていない』と思うようになり、人々の祈りも、信仰も、薄れていくこととなった……。


このままでは、神々全体への信仰心はなくなり、《神》という、太古から伝えられた歴史も、《神》という絶対的な存在意義であった立場も、科学という証明のひとつで、全てが消えてしまうという危険性が神、いや、神々全体で問題になった。


そこで、伝説では、姿を消したとされる最高神の、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)を初めとした、高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)と神産巣日神(カミムスヒトカミ)の造化の三神は、密かに集まり、この事態を何とかすべく話し合った。

しかし、三柱で話し合っても解決策はでなかった。

三柱は、宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)と、天之常立神(アメノトコタチノカミ)の二柱も加わえて、五柱で集まり、話し合った。

そこで出た案は、【神社の神自身が、人の願いを叶えやすいような環境を作り、人々の願いを叶える。】というものだった。

そして、環境を作るためには、神を支援する使いの者を増やすことが必要不可欠と考えた。

そこで五柱は、

【生前に善い事をした者を神の使いとする】

という案を出した。

その後、五柱は、案を天照大御神(アマテラスオオミカミ)に提出した。


天照大御神は、この案に同意し、全ての神々にこの案を伝えた。


こうして、神々の業界には、と呼ばれる機関、神使しんしが、造られることになった。

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