まっしろくろ

いつも通りのプロローグ

「ぶどう、買ってきて」


もはやこの言葉を待つようになってしまった。

僕は、いつも通りの彼女の言葉に、いつも通り苦笑しながら「わかった、買ってくる」と返す。


机に置いてある財布を掴み、玄関に向かう。


「行ってきます」


僕もまた、いつも通りのことを言って、ドアを開ける。そして、いつも通りドアを閉めてしばらくしてから、もう一度ドアを開ける。


「一緒に、行く?」


彼女もこの言葉を待っていたと、僕は知っている。


「行ってあげても、いいけど。」


いつも通り口を尖らせながら、彼女は小走りでこっちにやってきて、僕の小指に指を絡める。

部屋のドアに鍵をかけた後、彼女の方を向き、僕は言う。


「ごめんね。」


「私も、ごめん」


言い終わると、彼女はにこっと笑って、


「しゅっぱーつしんこーう!」


と言い僕の袖を掴んで走り出した。


深夜1時、隣の部屋のおばさんがドアを開け、「静かにしなさい!」と僕たちの背中に叫んだのはいいには、聞こえないふりをした。














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