さよなら、ニンゲン

ふぁんどりぃ

第1話 しっぽが生えたキュルル

 ある朝、それは突然訪れた。

 

 キュルルのおうちを探す旅で、他にヒトが居そうな場所を教えてもらうために、海に沈んだホテルから『イエイヌのおうち』へ向かっている最中に起きたの。私(カラカル)は、なにやらキュルルがお尻を片手で抑えながら歩いているのに気がついたわ。


「どうしたのよ、キュルル。そんな変な歩き方してっ!」

「えっ!?」


 キュルルの白い顔が少しずつ赤く染まる。そんなに恥ずかしいことだったのかしら? キュルルはお尻をサーバルの方へ向けて、私に向けて口を開いた。


「な、なんでもないよっ!!」

「隠すこと無いじゃないのよ~っ!」

「だから、なんでも無いってっ!」


 一緒に歩いていたサーバルも気になってキュルルのズボンを見ているわ。けれども、両手で私たちがしっぽが生えている部分(尾骶骨びていこつあたり)を抑えて必死に隠している。


「どうしたの? キュルルちゃん?」

「なんでもないよっ!」

「お尻が痛いの?」

「そうじゃなくて……っ!」

「じゃあ、なんなのよ?」

「だからっ……!」

「もうっ! 鬱陶しいわねっ! その手を離しなさいよっ!!」

「いやだっ! うわぁっ!」


 サーバルと私を正面に森の方へ少しずつ後ずさりするキュルル。そこまで見せたくないのなら無理矢理でも見てやるわっ! と私の足と手は勝手に動いていたの。気がつくと、背中に回り込んでいて抑えていた両手をズボンから離していた。そして、驚く光景が私の目に入ってきたの。同時に、キュルル自身があんなに隠していたのをようやく理解したわ。


「どうしたのっ!? これっ!!」


 私の大きな声が森中に響く。

 それもそうよ。キュルルのお尻からが生えているんだから。しかも、私のしっぽと同じ色である濃い橙色よ。一体どうしたのかしら……。

 私が呆然としている間、必死に隠し通そうとしたキュルルの顔は真っ赤に染まり、今にも大声で泣きそうな程だったわ。サーバルは「大丈夫だよ。なんとかなるよっ!」と声をかけているけど、我慢が抑えきれないのか、両手でズボンの裾を強く握りしめている。


「カラカルッ! 早くっ! キュルルちゃんに謝りなよっ!! 聞いてるのッ!?」「ふへっ!?」


 サーバルが私の両肩を掴んで大きく揺さぶっている。

 それでショックから立ち直った私は、すぐにキュルルの正面に移って頭を下げたの。キュルルは何も言わなかったわ。キッと私を睨んだ目が全てを物語っていた。

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