第38話【ロウキ】に助けに向かう

 【ロウキ】の人外やムーン達に避難命令が出された事を知らされたレオとマリー。すぐに骸骨仲間達と彼らの受け入れ準備に取り掛かった。

「【ロウキ】で避難命令が出されたという事は【ツリー】や私達の村にも敵が来るかもしれないわね。私達は大丈夫だけれど、瑠璃はどこにいるのが一番安全かしら。」

「骸骨村か【ツリー】。カールと一緒に【ツリー】にいるか、このまま僕達と一緒に骸骨村にいるか。今の状況で瑠璃を【ツリー】に連れて行くのよりここで皆で一緒にいた方が良いかもしれないな。骸骨中も達もいるし、【ロウキ】から避難してきた人が増えたら戦力も増加するしね。

 ただ、ここだとカールがいないのがね。カールがいたら何でも対応できるから安心なんだけど。」


 2人で話しあっていた所にカールが【ツリー】から駆けつけてきた。

「【ロウキ】で避難命令が出たって聞いた。ここも危ないかもしれないと思って駆けつけてきたんだ。

 燕さん達竜4人も一緒に来ているけれど、俺は呼んでないよ。瑠璃さんの護衛だからって勝手についてきたんだよ。まあ竜の風魔法は色々便利だし、味方の数が増えるのは助かるよな。」

「そうね。竜はともかくカールが来てくれてよかったわ。瑠璃は【ツリー】とここと、どちらにいた方が安全かって話し合っていたの。カールがいてくれるなら安心ね。【ロウキ】の事を瑠璃に伝えてくるわ。」

「わかった。俺は燕さんを呼んできていいかな。

 それから、残りの竜達を骸骨村の皆に紹介して欲しいんだ。竜達には周辺の警戒をして欲しいから、皆と顔合わせをしておかないと。」

「分かった。僕が皆に紹介してくるよ。燕さんには中に入ってもらって。」

「私は瑠璃を連れて来るわ。」


 マリーが瑠璃を連れて降りてくると、カール達が待っていた。

「マリーから話を聞いたわ。【ロウキ】で避難命令が出たって。淡雪達は大丈夫かしら。姫子さん達も。」

「人外や【ムーン】達は一緒に避難するし、いざとなったら人外が戦えるからね。大丈夫だと思うよ。姫子さん達も竜騎士団が避難させるそうだし。」

「そうだな、人外の避難は大丈夫だ。問題はムーンと異世界人かな。人形と人間の入れ替わりがあるから、判別方法が分からるまで、彼らは人外と別れて1ヵ所に纏まって避難すると思う。

 そうなると、もし中に人形が紛れていた場合何が起こるか分からないな。」


 カールの話を聞いて、不思議そうな顔をしている瑠璃達。

「ああ、瑠璃達はまだ知らなかったのか。今回敵対している辺境国家の領主パプティ・アーズが人形師なんだ。彼の作った人形が精巧で人間と入れ替わっても、一部の者にしか見抜けないんだよ。しかも見分けられる者達の話を聞いても何となくわかると言う感じでね。判別方法が分からないから困っているんだ。

 今の所人間の人形しかいないようだから、とりあえず人型と人外を分けて避難する形になると思うんだ。皆、人形師がそんなすごい事が出来ると思っていなかったから驚いてるよ。」

 カールは、【ツリー】でエルフ竜騎士団から聞いた話を皆に伝える。竜騎士団はエルフ達に作戦に支障のない範囲で今回の件について説明していた。


 カールの話を聞いて青ざめて険しい顔になる瑠璃。

「【ムーン】もそうだけど住民達に人形が混ざっていたら、淡雪達が危険じゃない。」

 瑠璃はそう言うと黙って考え込んでいた。

「淡雪達にはこの村に避難してもらおうと思っているのよ。竜騎士団は異世界人を避難させた後は【ロウキ】に残るのよ。人外は自力で非難しないといけないから少し心配ね。」

 頷いて辛そうな表情をしている瑠璃を見て、皆で目配せをすると頷いた。代表してレオが話し出す。

「瑠璃、助けに行きたいのかな。瑠璃が行くのなら俺達も護衛の竜も皆一緒に行くよ。危険だし怪我をするかもしれない。それでも瑠璃が行きたいと言うのなら、皆で一緒に助けに行こう。」

 カールの言葉を聞いて皆の顔を見る瑠璃。

「ありがとう、皆。私助けに行きたいです。」

 瑠璃の両手をマリーが握りしめて大きく頷いた。

「行きましょう。私達だって人外の皆を助けに行きたいと思っていたのよ。準備が出来次第出発ね。」


 皆武器や薬を持ち戦闘服に着替えて外に出た。外では準備を整えたハンナが立っていた。

「あら、ハンナどうしたの。」

「実はお願いがあって、私も一緒に連れて行ってほしいの。異世界人の姫子が私の友人の服屋で服を作ったりデザインをしたりしているのよ。彼女は【ロウキ】の異世界人の宿屋でまだ働いているから、心配で一緒に避難させたいの。」

「そうだったの。そういえば瑠璃が来てから異世界人に興味を持っていたものね。姫子さんと知り合いになってたのは知らなかったわ。【ロウキ】に着いたら別行動になるけれど大丈夫かしら。」

「ええ、勿論よ。いざとなったら魔道具と武器で何とかするわ。」

「そう、じゃ行きましょう。急ぐから瑠璃は燕さんと一緒にきてね。」


 皆は馬に、瑠璃は燕の背中に乗せて貰う。馬に風魔法を使って【ロウキ】に向かっていく。風に乗り凄い速さで駆け抜けた皆は1時間もかからずに【ロウキ】の近くの林に着いた。馬を隠して防御の魔道具を置くと【ロウキ】に侵入していく。

 【ロウキ】の壁にある秘密の抜け穴を通って中に入るとハンナは異世界人の宿屋へ向かっていった。瑠璃達はまず淡雪達の屋敷に向かう。


 屋敷に着くと、淡雪一家が揃っていた。瑠璃は淡雪達の無事を喜び、淡雪と抱き合っている。

「危ない中助けに来てくれてありがとうございます。

 今【ロウキ】の町中で住人達が争っているんです。多分片方が人形なんでしょう。【ムーン】やお年寄りの人外達を避難させていたらいつの間にか騒動が起こっていて。【ロウキ】の治安部隊が鎮圧に乗り出しています。

 竜騎士達は、異世界人や【ムーン】の保護と避難活動をしています。カールさんの友人バスンさんは、魔人達と鬼達と避難活動の支援をしていますよ。」

「私達も幽霊族や友人達は皆逃がしたから、避難するところなの。皆が来てくれて心強いわ。」

「バスン達は放っておいても大丈夫。彼らの方も皆を逃したから避難を開始するっそうだ。俺達もいそごう。」

 皆が話している隙に淡雪はこっそり竜達を脅していた。前回のような失敗は許されない、瑠璃には傷1つ付けてはいけないと。


 街に出ると急いでいて先程は気が付かなかったが、路地や家の中で人々が争っている事が分かる。火事になっている家も出てきて、瑠璃は淡雪と手を繋ぎながら皆と一緒に走っていた。

 スラム街を通り過ぎようとした時に、瑠璃の足が止まり淡雪の手を引っ張った。

「ねえ、あの人おかしくない。皮膚に血液が通ってないっていうか体も変だし、ぶにゃぶにゃしてゾッとする感じよ。なあにあれ、凄い気持ちが悪いんだけど。」


 皆瑠璃の見ている方を見ると、何人かの人間が争っている。カールが首を傾げてその集団を見ながら瑠璃に聞く。

「具体的に何が違うのかな、瑠璃。」

「目に光や感情がないわ。動きは人間っぽいけれど、動く時に皮膚が変なふうにしわが出来るっていうか、ぶにゃっと。ほら、あの掴んでいる手首の周り皮膚がたるんでる。太っている訳でもないし変よね。」

「ん、なるほど。筋肉の動きと周囲の皮膚に違和感があるね。骨組みと筋肉と皮膚。それに目にも感情が見えない。あれが人形なんだな。良く気が付いたな瑠璃。」


 すぐにカールがバスンや竜騎士の友人に連絡する。淡雪の父親やレオ達もどこかに連絡している。

「なるほど、乗っ取りが出来ない。私達が乗っ取れないのが人形。」

 淡雪の言葉を聞いて笑顔になった幽霊達。

「そうか人形を見つける為だけなら、広い範囲に幽霊族の皆で魔法をかけたらいいんだ。乗っ取れないのが人形だ。偉いぞ淡雪と瑠璃さん。良く気が付いてくれた、これで人形と人間の判別の突破口が出来た。」

「街を鎮圧したら捕まえた人間を人形と分けて、行けるな。」

「竜騎士団に向かってきたらどのみち戦闘になって捕まえるだろうし、人形が捕まったら仕組みの解明も出来る。これは凄い事だよ。お、ハンナがいるよ。竜騎士団もいるね。」

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