第35話タクマの訓練開始
訓練所で優しそうな若い男性が待っていた。
「やあ、マリ。初めましてタクマ君。君に訓練を付ける事になったセッキだ。よろしくな。」
「セッキさん、初めましてタクマです。よろしくお願いします。」
セッキの優しそうな雰囲気を見て少し安心した表情になるタクマ。セッキが今日の予定を説明する。
「初めてだって聞いてるし、武器をいくつか用意したから振ってみて一番合いそうなやつで訓練をしよう。後は基礎体力をつけた方が良いから、走り込みと筋トレだな。きついと思うけれど、頑張ろうな。」
「はい、よろしくお願いします。」
いくつか置いてあった武器の中から剣を取るとタクマに渡す。マリはタクマから離れてセッキの隣に行った。
「まず、剣を振ってみて。一番使いやすい武器だと思うよ。他の武器は少し癖があるから慣れるまで時間がかかるんだ。」
タクマは両手で剣を握りしめて何回か振ってみる。やった事のないタクマは数回剣を振り下ろすだけで息が乱れてくる。それを見ていたセッキは大剣を渡すが大剣が重すぎたのか、渡された途端に地面に落としてしまう。
「大剣は重い武器だから仕方がないよ。気にせず次に行こう。槍はどうだろう、水平に持って前についてみてくれるかな。」
言われた通りやってみるが足元がふらついてしまった。
「疲れてきているみたいだし、最後に弓を試してみよう。矢を射る前に引いてみてくれるかな。」
持ち方を教わって弓を引くが、凄い力が必要で半分引くと耐え切れずに手を離した。
「やっぱり最初は剣が良いね。剣の素振りの仕方を教えるから木刀で明日から練習しよう。今日は走り込みと筋肉トレーニングをやったら終わりにしよっか。
初日から無理して体を痛めたら明日の訓練が出来なくなるからね。マリ、後は君が教えられるよね。メニューは初心者用でね。終わったら食事にでも連れて行ってあげて。
じゃあタクマ君、又明日、頑張ろうな。」
「はい、ありがとうございました。」
セッキは外に出ると人形に訓練様子を伝えた。
「武器訓練の前にもまず体力をつける事から始めないと無理そうだよ。適当に見栄えが良くなればいいのなら、剣に的を絞って何個か型だけ教え込むけれど。それでいいかな。
初めての武器が全然できなくてがっかりした顔してたよ、普通は悔しがると思うんだが。気合もないし、いちいち励ましてやらないといけないし、あれ教えるの面倒そうだなあ、苛つくんだよな。
なんだか見てるとボコボコにしたくなる。しないけどな。」
人形は全て聞き終わると頷いて去っていった。
マリに何もできなかったところを見られて恥ずかしそうにしているタクマ。
「最初は皆出来ないんだから気にする事なんかないわ。これから剣の訓練を頑張ればいいのよ。」
「そうだな、これからだよな。俺頑張るよ。。」
「良いのよ、じゃあ後はセッキの言ってた訓練をやっちゃいましょう。セッキも自分の仕事の間をぬって教えにきてくれているのよ。言われた事はやっておかないとね。」
頷くタクマを促してストレッチからやり始めた。体の固いタクマはマリに励まされている。
「慣れるまではきついと思うけど、体が柔らかくなったら楽に出来るようになるからそれまでの辛抱ね。」
「ああ、向こうでは何もやってこなかったからなあ。」
「筋トレをやってから走りましょ。走った後に筋トレだとタクマ動けなくなりそうだもの。」
「うう、確かに。そのほうが良さそうだよ。」
しょんぼりと肩を落とすのを見てマリが軽く背中を叩く。
「ほら、いちいち落ち込まないの。頑張ればいいだけなんだからもっとシャキッとしなさい。」
「そうだよな。よし、筋トレを始めよう。」
元気よく一緒に筋トレを始めた2人。マリに言われながら進めていくタクマはどことなく楽しそうに笑顔だった。最後一緒に走りおわると、へとへとになって地面に寝転がる。
「疲れたのは分かるけれど最後は軽く体を伸ばしてストレッチよ。」
マリに苦笑いをされて起き上がり何とか最後のストレッチを終わらした。
「ああ、疲れたあ。体力も全然ないし体も固いし明日は筋肉痛だなあ。
マリ、ありがとう。セッキさんにも感謝だよな、忙しい中俺の訓練まで見て貰って。」
「ふふ、セッキが聞いたら喜ぶわ。セッキってあの甘い顔で女性には人気があるけれど、男性には嫉妬されるのか男友達がいないのよ。まあ、強いから誰も喧嘩は吹っ掛けないけれどね。
きっと、タクマの事可愛い後輩として可愛がってくれると思うわよ。」
「そうなんだ、かっこいいなあ。周囲に何もさせないほど強いだなんて。俺も頑張ろう。」
目が輝いて元気になったタクマを浴場に連れていく。浴場に着くと薬草の独特なにおいがする。。
「ここの薬草風呂は凄いのよ。疲労回復と筋肉痛も回復してくれるの。即効性だからすぐよくなるわ。
この薬草の配合は魔法の使えない私達が開発したのに骸骨族に奪われて。奴ら自分達が作ったものだって言っているのよ。頭に来るわ。」
マリの嘘を簡単に信じるタクマは一緒に怒り出す。
「何でもかんでも奪いやがって、本当に人外の奴らは最低だな。」
「タクマ、私達の為に怒ってくれてありがとう。」
「当たり前じゃないか。俺達はもう友達なんだから。」
マリに手を握られて少し照れたように顔を頬を赤くしてはにかむ。
「お風呂に使ったら隣にお湯が張ってある桶があるから出る前にそれで流してね。ちょっと匂いが独特でしょう。使用人がタクマの服を置いてくれるからそれに着替えて出てきてね。服は同じところにおいておけば大丈夫。」
マリと別れて浴場に入るタクマ、午前中だからか誰もいない。体を洗ってお風呂につかると薬草風呂のお陰でどんどん疲労が消えていく。マリはお風呂に入ったふりをすると外へ出て人形に見張りを頼むとセッキに会いに行った。
「お疲れ様、セッキ。タクマは今訓練の疲れをお風呂で癒しているわ。5倍の濃度ですぐ元気になるわね。」
「ああ、薬草風呂ね。5倍って大丈夫なのか、強い薬は毒になる。体に支障が出そうだが。」
「いいのよ、数か月持てばいいんだから。お父様の計画が完成したらもういらないんでしょう。」
先程のタクマとの会話を教えると、セッキが嫌そうに顔を顰めた。
「ええ、俺がアイツを可愛がんなきゃいけないの。俺ウジウジしてるやつ嫌い、あいつ苛つくんだよな。」
「頑張って、数か月なんだから。じゃ、明日もよろしくね。」
セッキと話し終えるとマリはお風呂を出たタクマに会いに行く。使用人案内されてタクマは玄関でマリを待っていた。
「お待たせ、じゃあお昼を食べに外に行きましょう。」
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