第18話カールの友人【ムーン】のイオと幽霊族の妻 淡雪

 待っていてくれたカールにお礼を言う瑠璃。

「カールさん、お店貸切って頂いてありがとうございました。」

「残念だったね、今彼ら以外に異世界人がいないのかイオに聞いていたんだよ。

 彼がこのお店 ”ラッココッラ” のオーナ兼料理人のイオだよ。イオ。彼女は友人の瑠璃さん。イオは【ムーン】なんだ、こう見えて28歳。」


 挨拶を交わす瑠璃とイオ。イオは紺色の髪と目の優しげな若い男性だった。

「カールから聞きました、大変でしたね瑠璃さん。

 異世界人は以前2人【ロウキ】にいたと聞いたことがあるんですが、ここを出ていきその後の消息は分からないんです。隼人さん達より前にいた人達です。隼人さんの後は、僕が知っている限りは先程ここにいた方達だけだと思います。【ラト】はそもそも異世界人がいると聞いたことは無いですし。

 鬼の村にいたように、人外の村などにいるかもしれないですけれど。カールやレオ達は知らないんだよね。」

「そうだな。少なくとも骸骨族とエルフ族では情報は集まらなかったな。」


 慰めるようにイオが瑠璃を見ている。

「【ムーン】の友達にも聞いてみます。少数族ですけど幽霊族の妻が接客をしていて夕方から来るので、淡雪にも聞いてみましょう。2人に食事を用意したのでどうぞ。」

 励ましてくれる彼らにお礼を言い、オムライスのようなご飯を食べる。

「美味しいですね。私の世界にもあったんです。オムライスっていうんですけど。」


 嬉しそうに食べている瑠璃を見て、イオも嬉しそうな顔をしている。

「異世界人の料理は隼人さん達から広まっているんです。宿屋で異世界の食事や日用品を売っていて、彼らは孤児や異世界人や事情があって困っている人達を支援しているんですよ。

 孤児院や暴力等で逃げてきた人を、積極的に雇っているオーナーのお店に作り方を売り、そこで作られた品を、隼人さん達や支援者達のお店で売るという方法を取っています。

 【アース】組合というんです。色んな種族が働いていて、品物も色々ありますね。」

「組織化されているんですね。支援者もいるなんて2人とも凄いな・・・・・・。 

美味しかったです。ご馳走様でした。」


 瑠璃が食べ終わるのを待っていたようにカールが瑠璃がもらった指輪を指す。

「瑠璃さん、レオ達に連絡してあげて。きっと心配してる。明日は【ロウキ】にいる友人の魔人に話を聞きに行こう。今日はイオ達の所に泊めてもらおうと思っているんだ。」

「家のお店は8時で閉店なんです。お酒はなしで食事だけ。ここで一緒に賄いの晩御飯を食べてから家に行きましょう。裏でゆっくりして下さい。」

「ありがとうございます。こちらに来てから本当に色々助けてもらってばかり。」

「私もそうでした。淡雪や彼女の家族と知り合って色々助けてもらったんです。

 こういう時は遠慮せずに甘えていいと思います。気になるなら、自分に余裕が出来てから誰かにお返しすればいいんです。」

 少し涙ぐんでお礼を言った瑠璃は、カールと一緒に裏へ行きレオ達に連絡した。


 暫くするとお店のドアが開いて、淡雪に連れられた竜族の円と狼がお店に入ってきた。

「イオ。この人達うちの店を見張ってたから透明になって襲って連れてきた。今コントロール中。そろそろ切れるけど、どうする?」

「えええ、そんな危ないじゃん、友人もいるのに。気絶させといて。」

 そういわれた淡雪はいきなり2人の頭を殴って気絶させた。


 床に転がっている竜達を見て悩むイオ。

「うーん、これどうしよっかな。カール、ちょっといいかな。」

 呼ばれてきたカール、床に転がっている竜達を見て顔を顰める。

「どうしたって、誰これ。ん、竜族かー。瑠璃さん、レオ達と話し終わったかな。こっち来れる?」

 呼ばれてきた瑠璃、床に転がっている竜達を見て眉を顰める。

「どうしたんですか? 誰ですかこれ。」


 淡雪が輝く笑顔で説明した。

「私達のお店を見張ってたから連れてきたの。初めまして、私淡雪、幽霊、イオの妻、よろしく。」

 幽霊族の淡雪の体の輪郭は薄っすら光って、体が全体的に淡く発光しているようだ。

「初めまして、瑠璃です。よろしくお願いします。」

「敬語要らない。これ竜族。知らないようなら、捕まえる。」

「竜族って。知り合いかもしれない。【ツリー】で会った関係者かしら。」

「ありうる。瑠璃さんを見張っていたか護衛か。気絶したけど、護衛っぽいな。」


 少し考えていた瑠璃。得意げな顔をして良い物があると袋から縄を出す。

「これ、骸骨族の友人がくれた魔法でも物理でも余程強くない限り千切れない縄です。」

 自分がぐるぐる巻きにされたときの縄を取り出した瑠璃。縄を見てプププと笑っている淡雪。

「おお、いいね。竜族って頭丸呑み竜の事聞いた。フフフ・・・・・・。 」

 既に頭丸呑み事件はあちこちに広まっていた。

 カールとイオが竜を縄でぐるぐる巻きにするのを見つめる。竜達はお店が終わるまで奥に転がされ放置された。


 お店も終わり家へ案内するイオ。淡雪は竜を再度コントロールして歩かせている。カールがぶつぶつと竜達に嫌みを言っている。

「アレクに聞いたら、護衛として2人竜族が守ってるって言ってたぞ。俺がいれば大丈夫なのに。

泊まるのは淡雪さん達の家だし安全だよ。君達を捕まえた淡雪さんの家だよ。」

 淡雪は笑いながら一言グサッと言うだけだ。

「竜はお馬鹿さん。周囲の気配の感知が鈍い。」

「結構言われちゃってるけれど、護衛が気づかれて捕まっちゃったら仕方ないよね。でも竜族2人相手を捕まえた淡雪さん強い。」


 瑠璃に褒められて嬉しそうに満面の笑みになる淡雪。皆で話していると、立派な屋敷についた。

「着いた。ここで家族で住んでるの。私の両親、イオの両親、私の弟夫婦8人。客室は4つある。お風呂トイレ付、食事も提供。玄関にいるの、私達の家族。」


 淡雪の家族が瑠璃達を出迎えてくれている。淡雪の家族は幽霊族、イオの家族は父が幽霊母が魔人だった。


「こんばんわ、お邪魔します。瑠璃です。今日は泊めて頂いてありがとうございます。」

「いらっしゃい、楽しみにしてたんですよ。ささ、疲れたでしょう。どうぞ。」


 淡雪は竜達を父親に任せ、カールと瑠璃を広間へ案内してくれる。

「あの2頭からは、明日までに全て聞いておくから安心してね。」

 竜達を任された父親は、隣の部屋に放り込んで戻ってきた。家族の紹介をしててくれる。淡雪の父親がセツさん、母親の淡華アワカさん、弟の華雪カセツ君、弟の妻麗さん。イオ君の父親のコウさんと母親のユウさんだ。


「夕飯は食べたって聞いたけど、一応部屋に紅茶と軽食を用意してあるよ。今日は色々あって疲れてるだろう。部屋に案内するからゆっくり休んで下さい。」

 確かに、疲れている表情の瑠璃。お礼を言って皆に挨拶を済ませると淡雪に部屋へ案内してもらった。

「ああ、本当に疲れちゃった。無理っぽいとは思っていたけれど、心のどこかで何か分かるかもって期待してたんだね。こんなにガックリしちゃうだなんて。少し休んだら今後の事を考えなくちゃ。」

 シャワーに入って少し休もうと横になるとそのまま眠ってしまった。


 カールは淡雪の家族と一緒に竜達と話しに行く。

「で、何で瑠璃さんを追ってきたの。俺がいれば大丈夫なのに。確か炎さんがこっちにきていたからどういうことか問いただしても良いな。」

 捕まったまどかろうは淡雪に負け、瑠璃にぐるぐる巻きを見られたショックでうな垂れている。

「頭丸呑み竜が出たから、竜の誇りの為に隠蔽しようとあの子を消そうとか思ったの? でももうみんな知ってる。エルフが、自分達の責任として竜族に謝罪してこの事を人外に広めたから。」

 竜達は頭をブンブン横に振って必死に否定する。

「違う。来たばかりの瑠璃様はトラブルに巻き込まれ易いと思い護衛してたんだ。君には負けたけど。そりゃ仲良くなって海の失態を挽回して、竜族は怖くないよって知ってもらいたいという下心はあるぞ。」

 軽く眉を顰めたカール。

「燕さんと仲良くなってたし怖がっている様子はないから、そこは大丈夫じゃないのかな。」


 黙って聞いていた淡雪が飽きれたように2人に言い放つ。

「こそこそしないで横にいていいか聞けばいい。狼、強面。人払いにちょうど良い。」

 それがいいなと皆賛成する。狼だけ複雑な顔だったが。

「炎さんに護衛の件は瑠璃に直接聞く事になったって報告してあげるよ。どうせ君達が報告すればこっちに確認がくるだろうしな。」

「じゃ明日、こっちが連絡したら出てきて瑠璃に挨拶。今日は解散、ハウス。」

 皆が頷くと、ドアが開いて竜達は外に放り出された。

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