第15話丸呑み事件の結果 【ロウキ】に出発
部屋に移動すると、皆に席勧めて話し出したブラッド・ジョンズ団長。
「では、改めて謝罪させてください。瑠璃様、申し訳ありませんでした。」
エルフ達が一斉に謝罪を述べた。
「補償金等の詳細は騎士団で相談させて頂いてから提案させて頂きますが、大体、竜騎士団の10年分の年収になると思います。衣食住や異世界人の瑠璃様の為の護衛、ご希望があれば魔道具等もご用意します。限界はありますが出来る限りの対応をさせて頂くので、お好きな物をおっしゃて下さい。」
いまだに青い顔の団長とエルフ達、パニックなのか慰謝料が凄い事になっている。困った顔をして考えている瑠璃。
「ジョンズ団長、ひとまず落ち着いてください。
竜が食べる気なら、最低限怪我はしているでしょう。ですが、被害は恐怖とべとべと涎だけでした。後で竜の生態を聞けば恐怖は薄まると思います。竜は人間食べないと聞いていますし。
怪我をしていないのに慰謝料等を頂くのは、私に他のエルフの方から不満がきそうですし、トラブルに発展しそうですよね。護衛もゆるい監視にもなりえるし。
他の餌候補だったレオさん達と相談しても良いですか?」
餌候補にという言葉に複雑な顔をしたレオとカール、マリーは笑っている。
「勿論です。我々は隣の部屋にいますので、終わったら右側の部屋へ来てください。」
団長たちが出るとすぐ、カールとレオが魔道具で防音や映像遮断等をした。
「これで大丈夫、好きなだけ話せるよ。いやー、吃驚したよ。危うく斬るとこだった。」
「一番弱そうって言ってましたね。すぐに見抜くなんて、竜の本能は凄いですね。
慰謝料ですけど、怪我はしてないのに貰うのはやめたいと思ってるんです。
結構大ごとみたいなので話も広まるだろうし、色々な考え方があるから、怪我もないのにお金を貰ったなんて文句言われたら嫌なんですよね。
自分の世界に帰る為の情報は欲しいし、最初はそれをお願するつもりだったんですけど、それもやめる事にしました。今回直接関係してくるのは竜のほうですし、でもどうして騎士団は竜を飢餓状態にしてしまったんでしょうね。
竜族の方にも慰謝料等は断ろうと思っていますけど、断る事で揉めたり納得されないようなら、異世界人の情報や帰り方の情報収集をお願いしたいと思います。相手にも体面がありますし、落としどころが必要かもしれません。」
皆、瑠璃の話に同意してくれる。
「そうね、その方が良いかもね。大金とか魔道具とかパニックになってるのね。エルフ達も。まあ気持ちは分かるし、前代未聞なのは間違いないわ。竜が人間の頭丸のみって聞いたこと無いもの。
「もう起こったら嫌ですよ。それにしても燕さんは強かったですね。蹴りで地面にひびが入ってました。」
皆と相談した後、団長達の部屋へ移動した。エルフ達は緊張で顔が青から白になっていた。
「お待たせしました。今回は怪我もなかったので何もいりません。
竜族の方が出来る限りの対応をするとおっしゃってくださいました。頭丸呑みしたのは竜なんですから、慰謝料等は竜族と私で話し合います。
エルフさん達は竜族と今回の事が起きた原因に関して協議が必要になるとは思いますが。」
納得できない様子のエルフ達にカールが援護射撃をする。
「瑠璃さんは、怪我をしていないだろ。それなのに大金や魔道具と衣食住に護衛だなんて、トラブルしか引き寄せないよ。だからここは、エルフの申し出をすべて断ることが大切なんだよ。竜は丸のみの犯人だからな。慰謝料貰うのはおかしくないだろ。」
カールの話に渋い顔をしているエルフ達。そこに、竜族代表達が到着した。
燃えるような短髪の赤髪と赤目の男性、背が高くて細身で締まっている体型だ。後ろに数人を引き連れて瑠璃の目の前までやってきた。
「瑠璃様、竜族代表の炎です。この度は竜族の海がご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。」
「申し訳ございませんでした。」
代表だけでなく、後ろの人々も皆人間のように見える。よく分からない、誰この人達、という顔の瑠璃はマリーを見た。
「瑠璃さん、竜族は人間に変身できるの。ついでに言うけど私達は出来ないわよ。」
「そうなんですね。失礼しました。瑠璃です。
頭丸呑みの件ですね。わざわざ来て頂いてありがとうございます。」
竜族の顔が青ざめ、一人の青年が崩れ落ちた。頭丸呑み発言がショックだったようだ。
そんな状況の中、特に気にした様子もなく、早く帰りたい瑠璃は話を進めていく。
「大事な事なので質問させていただきます。責めていいる訳ではないので誤解しないで下さいね。
竜族の方は他種族を餌にすることがあるんでしょうか。」
瑠璃の質問に全員一斉に首を横に振る。崩れ落ちた男性は静かに泣き出した。
「いえ、今までそんな竜はおりませんでした。非常時の際でも誰も食べたりはしておりません。
今回飢餓状態とはいえ、なぜこんな・・・・・・。」
「そうですか、それなら安心ですね。怪我はなかったですし、後はエルフの方達と再発防止に取り組んで頂ければさらに安心です。」
「それは勿論です。海にも厳重な処罰をします。慰謝料や竜宮への訪問など、可能な限り対応させていただきたいと思っています。」
固い表情の炎。瑠璃は首を傾げた。
「慰謝料などは別にいらない気もしますが。」
「とんでもない、出来る限りの対応はさせて頂きます。」
一歩も引かない形相の炎を見て、瑠璃は希望を述べていく。
「分かりました。ありがとうございます。では、お願いしたいことがあります。
私は自分の世界に帰りたいと思っています。【ロウキ】や【ラト】で同じ世界の人にこの事を聞きたいと思っているのですが、もしそこで何もわからなかった場合、帰る為の情報収集を手伝っていただきたいのです。」
「分かりました。瑠璃様。」
「では、よろしくお願いします。【ロウキ】と【ラト】を廻った後に、帰る方法が分かっても分からなくてもご連絡します。
皆様もこの後協議があるでしょうし、私も早く帰りたいので、これで失礼します。」
そういうと立ち上がる瑠璃、焦ったように炎が話しかける。
「あの、慰謝料など他にも条件を、色々つけられます。」
「今回怪我はなかったですし、情報収集でも十分なくらいの慰謝料になるはずです。情報収集の規模や協力体制等は、両国を廻った後に話し合いましょう。」
そういうと皆に挨拶をして瑠璃とマリー達は出て行った。
皆急いでカールの家に向かっていた。
「さ、一度家によって瑠璃さんがシャワー浴びてから【ロウキ】に出発しよう。」
「ありがとうございます。もう、一刻も早くシャワーに入りたいです。同じ世界の人から良い情報を得られると良いんですけれど。竜族の情報収集はどうやって収集するんですか?」
「んー大体みんな同じだと思うけれど、竜族は人間に変身できるから、各場所で潜入生活して集めることが多いね。後は、風魔法で声を拾うとか。ただ魔力感知の魔道具や遮断魔道具があると役に立たないけれどね。」
「風魔法で浮いて屋根とかから侵入したりもできるのよ。今気づいたけど、結構万能ね。」
「へえなんか、忍者みたいで格好いいんじゃないですか。」
カールの家に着くと直ぐにシャワーを浴び、荷物を持って皆で転移門に向かう。マリーとレオが見送りに来てくれる。
「瑠璃さんに会えないなんて寂しいわ。この何日かとっても楽しかった。」
「そうだね。念の為色々準備があるし、一緒に行けないのが残念だよ。カール瑠璃さんをよろしくね。
瑠璃さん【ロウキ】から帰った後に一度家に来てね。」
「私も寂しいです。【ラト】に行く前に会いに行きます。」
マリーが中心に小さな金色の花が3つある指輪を渡す。
「これは、登録した人と話せる魔道具なの。簡単に説明するわね。
中心の花に触れて相手の名前を思うとその人の指輪に伝わって話が出来るの。
相手から来る場合は中心の花が光るから触れると話せるわ。
私達のは登録したわ。登録は右側の花を触って相手の名前や種族を思えばいいのよ。
左の花は伝言を残す時に使えて、伝言があると花が光るから気がついた時に花に触ると内容が聞けるわ。」
「カールがいるし大丈夫だと思うけれど、【ロウキ】で何かあったら遠慮せずに連絡するんだよ。」
「はい、2人とも本当にありがとうございます。じゃあ行ってきます。」
そういってカールと瑠璃は、転移門をくぐっていった。
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