第6話エルフの国【ツリー】へ向かう
爽やかな風の吹く中、森の中は光が注ぎ輝いている。鳥の鳴き声は聞こえるが、動物は見あたらない。
気持ちの良い風のおかげで歩きやすい日だ。
「森には動物は余りいないんですか?」
「熊や兎にリスとか色々いるけれど、人がいる時は基本的に出てこないよ。【ラト】の森には、僕たちの他にも骸骨仲間が住んでいるからね。」
瑠璃は少し驚いた表情をして周囲をあちこち見まわしている。
「え、全然気づきませんでした。家とかも見かけなかったですよ。」
「僕たちは畑と鳥の飼育をしているから、結構広い土地なんだよ。」
「そうなの。羊を飼ってたり、鍛冶屋、雑貨店、果樹園とか色々あるわよ。落ち着いたら遊びに来てね。今度は皆を紹介するわ。」
「はい、また会いに行きます。」
【ツリー】につく前にと、マリーが結界について説明してくれた。
「瑠璃さんが初めてこの世界にきた時、草原があったでしょう。あの草原には結界が張ってあって、結界を抜けると【ラト】の国があるのよ。あの草原を歩いていると門が出てくるの。」
目を丸くして驚いている瑠璃、子供みたいで可愛いらしい。
「何もないと思っていたけれど、そういう風に見せているんですね。」
「そうなの。それでねエルフの国【ツリー】の結界は霧。霧の中をしばらく進むと、霧が晴れて門が出てくるのよ。【ラト】と同じ感じね。
人間の国【ロウキ】は城壁に防御魔法がかかっているわ。」
頷きながら質問する瑠璃。
「門で検査とかあるんですか?」
「【ロウキ】はあるわ。【ツリー】と【ラト】は何をしに来たかと名前を言うくらいよ。
犯罪を犯した者や国が通したくない者は、結界にはじかれてしまうの。詳しい仕組みは分からないんだけど、霧や草原の先に進めなくなるわ。」
「結界って細かく設定出来るんですね。魔法って凄い・・・・・・。
マリーさんがくれたネックレスの防御魔法の他にも色々あるんです。異世界って他にはどんな魔法があるんですか、手から魔法を出したり空を飛んだりできるんですか。」
わくわくしながら聞いてい来る瑠璃に、2人とも思わず笑いだすがレオが説明してくれる。
「残念ながら魔法では飛べないよ。飛べるのは獣人の鳥族。魔人も飛べる者がいるかもしれないけれど知っている限りでは鳥族だけかな。」
「そうなんですか、残念です。」
「あ、天使や天馬もいないよ。動物が合体したのとか聖獣とかドラゴンもね。
地上を走る竜はいるけれど馬より少し大きくて頑丈な感じだね。騎士や一部の人達と一緒にいる事もあるけれど大体の竜は自分達の国にいるね。」
まだ笑ってるマリーに対して瑠璃は少し赤くなっている。
「えー残念です。天馬とか乗ってみたかったのに。鳥族の人は乗せてくれたりは?」
「しない。」
声が揃えて即答するレオとマリー。
「天馬とかドラゴンとかはおとぎ話だからね。
後、獣人を動物と一緒にすると不快になる人が多いから気を付けるんだよ。勝手に触るのもダメだからね、耳とかしっぽとか。まあ、異世界人って分かれば、納得して怒りはしないだろうけれど。」
少し不安そうな顔になって丁寧に説明するレオ。
「そうね。皆私達と同じ”人”だと思えばいいと思う。
魔法が使えるか身体強化できるか両方できないか後は外見が違うくらい。良い”人”もいれば悪い”人”もいると思っておけば大丈夫よ。
知らない”人”には着いていったら駄目よ。物を貰ったり貰った物を食べるのもね。」
小さな子供を心配するように、瑠璃を見つめているマリー。
「そこは、大丈夫です。大人ですから珍しいものにつられたりしません。」
自信たっぷりに言いつつも、どこか不安そうな雰囲気がしている。
「魔法も詳しく知りたければ、【ツリー】の図書館に簡単な本が置いてあるわ。今日は私達【ツリー】に泊まるつもりだから瑠璃さんも一緒に泊まる?
友人の家だからお金とかは気にしないで。瑠璃さんに貰ったお菓子をお土産に持ってきているし、友人も気のいい人なのよ。
エルフの友人も紹介できるし、町も案内できるわ。」
エルフとお知り合いになれるチャンスに2人とまだ一緒にいれる申し出に喜んで頷く。
「はい、是非お願いします。」
「はい。」
嬉しそうに笑う3人。途中、大きな切り株を見つけてそこでお昼を食べ、おしゃべりをしながら歩き続けた。
「うわー、本当に霧なんですね。真っ白・・・・・・。 」
「うん、問題がなければ1分もしないうちに霧が晴れて門が出てくるよ。」
そう言って霧の中へ歩いて行くレオとマリーに続いて、どきどきしながら瑠璃も霧の中へ入っていった。
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