第12話 戦士カルタ見参!!


 ティル部隊は先を急いでいた。広い空間を抜けると、また暗く、じめじめした細い道が続いた。今度は緩やかな登り坂が続いた。ペルクは疲れ、部下達が交互に抱き上げ移動した。ペルクの母親は感謝し、改めて姫様の凄さ(異常さ)を感じた。


部下の一人がティルに聞いた。


「姫様、あの絵は何だったのですか?」


ティル部隊は、広大な空間の大きな壁画を思い返した。



 壁画には、見たことのない文字らしき暗号、竜や人、悪魔、怪物などの絵が描かれていた。何かの物語のようであった。その中に、見たことの無い武器や乗り物、道具、建物のような物も描かれていた。まるで今では比較にならない程、高度に発展した古代文明が存在していたかのようであった。


ティルは少し間を起き、答える。


「分からない。大昔に私達に想像もできないような文明が、このスカイドラゴンシティーに栄えていたのかもしれない。皆には見せなかったけど、あの大きな空間の真ん中には祭壇のような物もあるのよ」


ホスマが驚いたように聞いた。


「凄い発見じゃないですか! 何故、誰かに知らせて発表しなかったのですか?」


ティルは目を細め言った。


「もう少し大人になってから発表しようと思っていたの。子供の頃に伝えて、あの壁画を調べる研究グループができる。そしたら、私に探求する主導権は無くなると思ったからよ!!」


部下達は、


『さすが、姫様、計算高い』


と誰しもが思った。



  実は、既にティルは古代文明について、個人的に調べ始めていた。しかし、いくら資料や古文書を調べても、スカイドラゴンシティーの大昔の資料は一切無かった。掻き消された空白の歴史のようであった。結局、どうやって、ここ(天空の島)に人間が来て、どのような歴史があったのか?そして、この壁画に描かれている文明は一体、何なのか?は分からないままだった。


ティルは力説した。


「とにかく何でもタイミングが大事なの!!今、急いでいるのも、それ!!まぁ、ジェラ爺や先生(カルタ)がいるから大丈夫だと思うけど・・・」


ホスマが大きく頷く。


「あの二人がいれば、アスマ級のモンスターが来ても大丈夫でしょう!」


とは言ったものの、誰しも不安の一抹を抱えていた。






~スカイドラゴン城~


スカイドラゴン城1階ではカルタ部隊(52名)と死霊60数体の交戦が続いていた。


住民を城の中に避難させた際に、城内に一緒に入ってきたのである。



 そして、死霊60数体の中に、1体だけ他の死霊よりも2回り程、身体が大きく、巨大な斧を持った黒い髑髏がいた。そのモンスターに悪戦苦闘していた。



 巨大な斧を持った髑髏の前に一人の戦士が立った。その名はカルタ・マースである。ティルの剣術の指導者でもあり、カルタ部隊の隊長(総責任者でもある)、その人であった。カルタは少し黒みがかった茶色の瞳と髪の毛を持ち、髭を生やしていた。堀の深い顔には歴戦の皺が刻まれていた。30年前にあった光と闇の戦争を経験した数少ない戦士である。60代近い年齢であったが、スカイドラゴンシティー最強の戦士の座は揺らがなかった。



 カルタ・マースについて、少し話をさせて頂く。彼は、若い頃、血気盛んであり、喧嘩早い一面があった。そして、彼の目は笑っていても冷たかった。その為に周囲の者は彼を恐れ、距離を置いた。



 彼は戦闘能力が高く、勇敢に戦ったこともあり、30年前の戦争では活躍を収めることができた。しかし、妻のセル、娘のハルタ(3才)を亡くした。二人は、他の住民達と一緒にスカイマウンテンに避難していたのだが、突如、山が崩れ、巨大な青き竜が出現したのである。その際、土砂崩れに巻き込まれ、命を落としてしまった。セルがハルタの上に被さった姿で土の中から遺体で発見された。セルは最後までハルタを庇おうとしたのであろう。この戦争では、天空の島だけでも数多の人が犠牲になった。



 カルタの家はドラゴンシティーの外れにあり、建物の損傷は無かった。しかし、カルタは30年前の戦争から家に帰ろうとせず、スカイドラゴン城で暮らしていた。家に帰ると思い出に潰されそうになるからだ。いくら強靭な身体をしていても、心はそうはいかなかった。家路に向かおうとすると、家でセルとハルタが待っていてくれそうな気がした。そんな気持ちで、家のドアを開けることが辛かった。ただ、1年に1度、彼女らの命日にだけ、家に帰り過ごした。



 そんな、カルタであったが年々、彼の目は優しく、哀しみを帯びた物になった。周囲の人達に対しての接し方が変わった。部下達は、彼に惹かれた。今や、スカイドラゴン城、全兵隊の精神的支柱となったのだ。



 話を戻そう。カルタが巨大な敵の前に立った瞬間、部下達から大きな歓声が起こった。隊長ならなんとかしてくる、そんな期待の眼差しが彼に降り掛かった。


彼は左右に首を傾け、大きく息を吸い、吐いた。鞘から、ゆっくりと剣を抜いた。幅の分厚い大きな剣であった。剣先が鈍く光っていた。剣というよりも、鉄の塊と言ってもいいかもしれない。その剣の柄を両手で握り、腰を深く落とし構えた。



<登場人物プロフィール>


レベル58

名前:カルタ・マース

種族:人間

性別:男性

年齢:58才

身長:182センチ

体重:95キロ

職業:カルタ部隊・隊長 兼 全部隊の総責任者

才ある職業:戦士

HP:220

MP:0

力:178

スピード:85

防御力:100

魔力:0

使える魔法:なし

スキル:カルタ流・斬鉄流剣術

装備品:鋼鉄の鎧・鋼鉄の籠手 ・大剛鉄剣

アイテム:ポーション

備考:部下に優しく、頼りにされている。ティルを亡くしたハルタと重ね合わせている。


※上記の記述は経験や環境によって後天的に変化します。

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