人の剣は魔女の剣に

第10話

【表現】『』は口に出さぬ言葉

　血を吸う魔物〝吸血種〟は魔族の中でも特異な存在であり、血を媒介に生命力を得る吸血種は希少性が高い。

　魔界で最も有名な吸血種は人間の血を欲した末に狼王を殺して王に成った蝙蝠。

　四足で俊敏に動き、二足で荷車を押す鼠の魔物（全長１㍍）の集まり〝鼠（ねずみ）族（ぞく）〟は吸血種の蝙蝠〝鼠族の長（鼠（ねずみ）長（おさ））〟を頂点に形成されている。

　鼠長に敵わぬ鼠（鼠の魔物）たちは下位に甘んじ、隷属することで生き延びている。

　支配される者が支配する者に勝ったなら立場は逆転するが勝てぬ限り、隷属する日々は変わらない。

　独立し、族を作ったなら長に成れるが、長に勝ち序列を引き継ぐ方が、単純で人間より知性が劣る魔物には都合が良い。

　下位の魔物が上位になる方法はより上位の族長（族の長）に勝つことであり、魔王に勝ったなら魔王に成れる。

　上位は下位へ命令を行えるが下位が上位に従う決まりはない。が権威ある上位に逆らえば己が立場が危うくなる。

　野心ある下位が居て、己が立場を守りたいなら逆らわず従うが妥当。

　己と上位の意思が反した時、逆らいたければ反抗し、己が勝者と示す他ない。

　逃げる魔物も居るが、逃げた先で望みが叶うとは限らない。