「彼女たちに縁故なし」

講義棟の席に、また二人が同じ席に座る。

 

その席は、講義棟の入り口から近い後方の席。いつでも抗議の途中で席を外していつものように二人で話し込むのだろう。

 

ほら、また出ていった。

 

二人が出ていくときは講義が始まって一時間も経たないうちに出ていく。どちらかが“ポンポン”とつつき、その合図に合わせて席をゆっくりと立つ。講義を淡々と説明している教授が背を向けた瞬間に、音を立てずに離脱していく。

 

手慣れたもので、ドアもゆっくりと開き、開閉音を立てずに出ていく。二人にとっては日常茶飯事。それもまた、恋愛話をするために。

 

話はいつものこと。進展のない他愛のない話。よく言う「女子会」とはまさにこのことを示すのだろう。

 

そういう行事ごとは、こうした時間でなくとも良いと思うだろうが二人にとってはこのタイミングこそ“会話のできる時間”なのだと共鳴しあっている。

 

言わば“癖に近いものだろう。







 

くだらない。





 

わたしは彼女たちを見てきて常々思う。







 

 

お互いがどのような思い方をしているかなんて、お互いが知ってる友人との会話を聞いてよくわかっている。

 



一方は「いつ別れるかなー、心配」という。

一方は「なんで告白しないんだろー」という。

 



お互いが、お互いを影でけなしあう。そんな姿を入学してからずっと見てきた。





 


 くだらない。





 友人って何だろうね。








 せっかく命があるのに。







 

そんな私は、彼女たちを“見守る”ことしかできない。

 

でも、後悔なんてしてほしくない。

 

 



こんなおばさんのたわごと、伝えたくても伝えきれないんだよ。



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