第13話 鼓動
十五歳と十一カ月のアタシがここにいる。この肺は膨らむことができなくなりつつある。ママもパパも本当のことは、最後まで言わないんだろう。
でもね、わかってる、肺に、転移、してるんでしょう? レントゲン撮ったのに結果の画像は見せてくれない。今までは見せてくれた。採血したのに数値を見せてくれない。今までは見せてくれた。
肺転移は他の腫瘍にも起こるけど、骨肉腫の肺転移は肺胞を骨化させる。今の私の呼吸は、肩が上下することで肺を動かし酸素と二酸化炭素を交換させている。
十四歳のときに当たり前だと思っていたこと、それは、十五歳になっても七秒台で五十メートルを走ること。クロールだけじゃなくてバタフライもうまくなるつもりだった。
アタシにはもう、十四日しか残ってない。あさって、最後の入院をする。最期の人のための広い個室に。苦しみを取るだけの点滴を始めるのが今日から五日後。
神社のお祭りでトモダチと歩きたい。
夏になったら浴衣も着たい。
成人式で振袖着るために、リハビリ頑張って、薄い装具を開発して両松葉杖を方松葉杖にしてみせるつもりだった。
なのに今は立つこともできなくなった。
やりたいこと、いっぱい、ある――
二〇一三年一月二十日十七時まで、心電図モニターには必死な、弱々しい波形が流れ続けていた。
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