ヤギの行方を僕たちは知らない

@mafuda3

第1話

とても懐かしい話をしよう。そう呟いて老人は語り始めた。しゃがれた低い声で、しかし遠くまで届くような歓声をふくむ不思議な声だ。


長老はだんろのソバに寝そべっていた。だが上体をあげて壁に寄り添いやや斜めな姿勢になった。

長老は齢七十を超える頃になるが、しかし長老が子供の頃から、その老人は老人だったのだ。


「たわいのない話から始めるが…


と、老人は始めた。


昔はよく鳥がとんでいた。


鳥も小さなものから大きなものなどたくさんいた。


シカし小さな鳥なものなどは、おもにしてスズメなどは敏感でやがて我々を避けるようになった。

いまでは彼等と再び友情をはぐくむなど、できない相談になってしまった。

また地上から大きな愛をもって海へ行くものがある。

クジラやおっとせいの如くはいまだにヒグマと争っている。

狡猾なシャチを恐れよ。

できないならみなしぬことになるだろうと、皇帝となるペンギンが高らかに鳴き叫んだ。


その音を聴いていったい幾らの人間の命が助かっただろうか。我々の命とは意外と二足三文で、貨幣としては便利に使われてるかもしれない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る