星護りコルドの憂鬱(4)



 *****



 勘定を済ませ、店を出てレイルドと別れ、ふと見上げると、今夜は天に美しい星空が広がっていた。



 観測日和だと言って、ルファもルセルも喜びそうな夜空だった。



 子供の頃から月星が大好きで、こんな夜は何時間でも飽きずに、嬉しそうに天を見上げて………。



 観測しながら眠ってしまったルファを 何度寝台へ運んだことか。



 (あっという間に大きくなりやがって……)



 巡察先でも、うっかりベランダで居眠り、なんてことがないようによく言っておかねば。



 ───居眠りしても、もう寝室まで運んでやれないんだぞ。



 星読みになったからには、今までのように、自分もルセルも傍には居てやれなくなるだろう。




「コルド!」



 立ち止まっていた後ろから、明るい声が呼んだ。



 振り向けば、輝く星のような髪を揺らして、ルファが駆けてきた。



「やっぱり飲んでたんだね。顔が真っ赤だよ、コルドったら」



「……なんだよ、よくここが判ったな」



「ルセルがね、きっとレイルドのおじさんといつものお店だよって言うから、迎えに来たのよ。レイルドのおじさんは?」



「もう帰ったよ」



「じゃあコルドも帰らないとね」



「ちぇ、もう一軒寄っていこうと思ってたのに」



「だーめ! もう家へ帰るの。ルセルとわたしで美味しいシチュー作ったんだから」



「シチューか」



「コルド大好きでしょう?」



「ああ、………うん。………なぁ、ルファ」



「なあに?」



「ぁあ、いや…………迎えに来てくれて、ありがとうな。あと、シチュー作ってくれてありがとう」



「……変なの。そんなことでお礼言うなんて、コルドらしくない。酔っ払ってるせいだね、きっと。今夜はもうお酒はダメだよ」



「ぇえぇ~~ ! そんなぁ。な、ちょっとだけなら……」



「ダメったらだーめ!」



「………わかったよ」



 がっくりしょぼーん、と 肩を落とすコルドを見て、ルファはクスッと笑った。



「ね、早く帰ろう。ルセルが待ってるから」



 温かな手を腕に絡ませてくる愛娘を見つめ、コルドは優しく頷いた。



「ああ、帰ろう………」





 ………ルファ。


 おまえには感謝している。



 おまえのおかげで俺は帰る場所を、幸せだと思える場所を……


 そして、


 数えきれないほどの幸せをおまえから もらったんだ。



 だからルファ………



 心から




 ありがとう。





〈終〉





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