うしろの正面だあれ?
望月くらげ
第1話
薄暗い帰り道を
「もう……! 誰なの!?」
そう叫んで振り返るけれど、その瞬間、足音も止まりカラスの鳴き声と風が通る音しか聞こえなくなる。
「誰なのよ!」
あかりの問いかけに答える声はなかった。
あかりはこの二ヶ月、ずっと正体不明の足音に悩まされてきた。
最初は、気のせいだと思っていた。たまたま誰かが同じ方向に向かって歩いているのだと。
でも、週に一回だったのが週に二回になり、そして三日四日と続くようになるにつれ、さすがに誰かにつけられていると思うようになった。
友人に相談しようかと思ったこともあった。でも、そう思って一緒に帰ったときに限って足音は聞こえてこないのだ。そうなると、自意識過剰だったのか、と思ってしまい何も言えなくなる。
結局、あかりは自分の気のせいだとそう言い聞かせて今日まで来てしまった。けれど……。
(やっぱりこれ、おかしいよ……!)
あかりが走るスピードに合わせて、追いかけてくる足音もスピードを上げたり落としたりを繰り返す。
「っ……!」
ようやく見えた自分の家に、あかりは最後の力を振り絞ると、必死に家の中へと飛び込んだ。
鍵と、それからチェーンをして、ここまで来ればもう大丈夫、と、あかりが息を吐いた瞬間――家の中に、チャイムの音が響いた。
ピンポーン
「ひっ……!」
偶然と思うにはタイミングのよすぎるチャイム。そしてガチャガチャと外からドアノブを回す音が聞こえ、開くはずもないのにドアが揺れるだけであかりの身体は恐怖に震える。
いつもなら、家の中に入ってしまえば諦めて帰って行ったのに、どうして……。必死に身体を抱きしめながら、早くどこかへ行ってくれることだけをあかりは祈っていた。
どれぐらいの時間が経っただろうか。あれだけ騒がしかった外がようやく静かになった。
諦めて帰ったのだろうか……と、恐る恐る玄関のモニターをオンにしたあかりは――。
「っ……!!」
モニターを覗き込むようにして映り込む『目』に言葉を失った。
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