第29話
「もしも、本当に……。本当に、未来視があるのだとして……」
明らかな魔法適正の低さが異能とどういった関係性を持つのかはさっぱりわからない。たびたび未来視を見ることも増え、セシルに先のことを確認することが増えた。たぶん、その確認をすることで彼には違和感を与えているだろう。
「仮定とするならば、異能を持っている人は魔法が使えない傾向にある、ということよね」
まず、私がたてた仮定はこうだ。魔法が使えない人もいるにはいるが、その中でも異能を持っている割合が多い、というもの。しかしこの仮説はあくまでも本当に仮のものに過ぎなくて、とある一冊の書物、それも古書にしか載っていなかった。それ以外の書物で見たことはない。もしかしたら、まだ見つけられていないだけかもしれないけれど、ほぼ、望みは薄いだろう。
「おひいさん、その話、本当か?」
「ひゃぁ!」
ちょうど、報告書を持ってきたセシルが書類を落とすほどに驚いている。急にセシルが声をかけてきたこともあって、私のほうもびっくりしてしまった。何せ、執務机に背を向けて座っていたから。
「おひいさんは、やっぱり未来視を持っているのか?」
「待って、セシル。あなた、知っていたの?」
「質問を質問で返すなよ……。おひいさんが何かを隠していたのは知っていた。でもそれが何かまでは知らなかった。今、おひいさんがその未来視という単語を出すまでは想像さえもできなかった異能だ」
「そう……」
「で、おひいさんは、未来視を持っているのか?」
「……、正直に言えば……、わからないというのが答えよ。もしかしたらただの創造かもしれない。だから、本当に未来視かどうかというのは、確証を得られていないの」
「わかった、今は何も聞かない。でも、いつか未来視ってことがわかったらそのときはちゃんと俺にも主様にも教えてほしい」
「もちろん、そのつもりよ」
セシルは何も知らないでいてくれると、言った。私は早くこの奇妙な夢なのか、本当に異能なのかわからないコレを未来視かどうか確証を得なければならない。もうすぐ私は王立魔法学院に入学することになる。
当たり前ながら、王立魔法学院はその名の通り、魔法の適性が高い子どもたちが通う場所。私のように魔法がほとんど使えない人はほぼ、いない。それに私はこの国を担う王族の一人だ。その王族が魔法も大して使えないとなると、示しがつかない。何分、過去に私のように魔法が使えなかった王族はいないからだ。
「まあ、その前にお茶会ね……」
だが、その入学式前にお茶会を二つ開く予定がある。一つは同じ年頃のご令嬢を招いてのお茶会。もう一つは婚約者候補を招いたお茶会だ。婚約者候補のお茶会には双子たちも出席予定になっている。ご令嬢のほうになぜ出席しないのかというと、女の闘いを見るにはまだ早いと思うから、というのが一番の理由。
「おひいさん、そういえばお茶会を開くって主様に書類出してたね」
「そうよ、あの子たちのマナーチェックも兼ねているし、婚約者候補の人たちには弟や妹がいたら連れてきてもらうようにしているから、顔合わせも兼ねているの」
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