第6話
「アイリーン王女殿下、その……お、わたしの話はつまらなくはありませんか?」
「つまらないなど、そのようなことはありません。とても有意義な話ができて、嬉しく思います」
アレクシスと政治の話をしているうちに、緊張もお互いにほぐれて、彼の表情も穏やかになってきた。実はこれは父から与えられた試験だと思っていたので、つまらない話ではないかと不安に思っているアレクシスを見て、勘違いをしていたと安心した。
お茶やお菓子をつまみ、ゆっくりと話をする。政治の話も区切りがついたので、今度は私から話を振ってみる。そう、お見合いの定番、ご趣味は?だ。
「アレクシス様は普段、どんなことをなさっているのですか? 趣味など、ありましたら是非、教えていただきたいです」
「どうかアレックスとお呼び下さい。普段は、父の仕事を手伝えるようにと家庭教師と勉強ばかりで……。でも、そうですね……遠乗りをするのが好きです。たまに父に連れて行ってもらえることもあって……、それ以来、領地でも一人で乗ったりします」
愛称を呼ぶことを許してくれた彼は、恥ずかしそうにしながらも趣味というよりは、好きなことを教えてくれた。少しだけ笑みを浮かべたアレックスはセルフォンス公爵を尊敬し、父親としての公爵のことも大好きなのだという気持ちが伝わってきた。
「素敵ですね。きっと、晴れた空の下で野原を駆けるのは気持ちいいのでしょう……」
「アイリーン王女殿下、わたしが大きくなって一人でも遠乗りができるようになれば、是非ご一緒しましょう」
「いいですね、ぜひ」
年相応の少年らしい表情、そんな彼からお返しに私の趣味も聞かれた。これでは本当にお見合いだ、と思ったけど、これお見合いみたいなものだったと気づいて焦る。何分、趣味と言ったものをここ数年、いや、前世を思い出してからは一切していない。唯一、やってきたことと言えば、人間観察だ。そう思っていたら口が滑ったようで。
「アイリーン王女殿下のお好きなことは……、そのお聞きしたいです」
「そうですね…………に、にんげんかんさつ、でしょうか」
まって?今私、人間観察って言わなかった?
「人間観察、ですか……。王女殿下のその慧眼は、観察することによって鍛えられているのですね……。俺も、見習わな……っ、失礼いたしました。私も見習いたいです」
しかしアレックスの反応は、予想していたものではなかった。ドン引きされると思っていると、過大評価をされていたようで逆に褒められて見習いたいとまで言われる。まさかそんな反応をされると思っていなかったのもあって、ちょっと照れ臭いというか、だいぶ恥ずかしい。
「まだまだ、陛下のお力にもなれない若輩者です……。これからも精進します」
「わたしも、精進いたします」
セルフォンス公爵がアレックスを迎えに来るまで、私たちはお茶を飲みながらいろいろな話をした。初対面だったけれど、いい関係が作れたと思った。
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