第7話

アレックスと出会い、良き話し相手ができた私は彼に失望されないように、より一層の努力をするようになった。彼は、公爵家の跡取りとして、また私の婚約者筆頭候補として相応しくないあろうとしているのを、私はたまに会うたびに感じるからだ。


「アイリーン王女殿下、またこうやってお話ができて、光栄です」


「わたくしも、こうして実りある話をすることができることを、嬉しく思っています」


アレックスはセルフォンス公爵が王城に来る時に一緒に来て、私とお茶会をする。そのお茶会の間にたくさん、お互いが勉強した内容を話し合い、いつかこの国の力になれるようにと現状の問題を話し合う。そのことはあとでセルフォンス公爵が来た時に二人で聞いてもらうようにしている。



いわば、切磋琢磨しあう、ライバルのような関係だ。



 そんな私に、また婚約者候補との顔合わせが入った。アレックスとのお茶会が始まってから半年後の事だった。


「王女、あなた様は最近人が変わったとお聞きしたのですが。何かありでもしましたか?例えば……暗殺未遂とか」


こちらを探っているとわかる、確実に試していると感じられる目をした少年。ギルベルト・サーシェス、サーシェス侯爵家の令息だ。ギルベルトは婚約者候補と言っても家格の問題から下位候補ではある。しかしこの言葉に私は察した。


 彼は、私が我儘な王族として相応しくなかった過去を知っている、と。王宮に仕えている人たちに迷惑をかけて、実の父である国王にも期待されていなかった過去を知っている。


「暗殺未遂だなんて、近衛騎士の守るこの王宮でそんなことは起こることはありませんわ」


「へぇ、王女様は随分甘いお人のようだ」


「まあ、暗殺したくなる気持ちもわからないわけではありません」


「は?」


そして、わざと暗殺未遂などという、場合によっては不敬罪で捕まってもおかしくはない言葉を使って私を煽った。化けの皮を剥ごうと。


昔の私なら、きっとギルベルトを不愉快であるという気持ちを前面に出して衛兵を呼ぶだろう。でも、もう私はそんな私じゃない。それにギルベルトの言いたいことはよくわかる。あんな横暴な王女など、国を背負って立てるわけがない。


暗殺されるか、傀儡にされて搾取されるくらいしか、もはや先の未来が見えないくらい将来が真っ暗だ。私がこの王女の治める国の民なら、真っ先に国を出る、もしくはクーデターを起こす、暗殺されるように願うだろう。


「私の愚かな行いはたくさんの人を傷つけました。私はそれをとても悔いています、それこそ、過去に戻れるのならば今すぐ戻ってその行為をしようとする自分を止めたいくらいには。私は残念ながら自力でそのことに気がつく事はできませんでした。天からの思し召しを受けて、初めて自らの行いというのを顧みたのです。その時に思いました、私は暗殺されてもおかしくはないと。こんな国の不利益になるしかない王女など不要ですもの」


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