俺と弟とアイス、猫も少々。
空彩★
第1話 耀渡「待たんかいこのバカはや」
これが夏の試練なのだろうか。
ジャン負けして弟達にアイスを買ってくるよう頼まれてしまった。
どうも、大和田家長男・耀渡です。
読み方はようとです。
うちは8人兄弟です。
上4つ子、真ん中男、下3つ子と、とても珍しい家族だと思います。
自分でも母さんめっちゃ頑張ったな…と思います。
ちなみに下3つ子の真ん中は唯一の女子です。
はい。
あ、一応名前も教えときますね。
次男・尚(なお)、三男・疾風(はやて)、四男・裕哉(ゆうや)、五男・悠(はる)、六男・蒼斗(そうと)、長女・菘(すずな)、七男・玄冬(くろと)
今はどうでもいいですね、はい。
もう1人着いてきてもいいものを何故俺だけに行かせるんだ…
こっちは毎日のデスクワークで疲れてるっつうのに…
駄菓子屋が家から五分の位置といえどだるいもんはだるいわ…
猫「にゃー」
耀渡「…なんでお前がいるんだ、千瑚」
猫「にゃー」
水色の首輪を付けている黒猫が俺の前に立ち塞がった。
こいつはうちの猫の千瑚(ちこ)。犬の菜都(なつ)も家にいるのだが、普段はその菜都の小屋で陣取ってるはずだが…
耀渡「…チャウ〇ュール」
千瑚「にゃー」
鳴いたものの微動だにしねぇなこいつ…
チャウ〇ュールじゃ足ねえのか、随分と贅沢じゃねえか千瑚様よぉ…
耀渡「…カリカリ」
千瑚「…」
無反応
耀渡「にぼし」
千瑚「…」
また無反応
耀渡「かつお節」
千瑚「…」
何故だ。お前は何が目的なんだ…
………もしかして…
耀渡「…ワン〇ュール」
千瑚「にゃあん」
黒い物体はそのままトコトコと俺が来た道を戻って行った。
………なんだあいつ。
そこまで菜都のこと考えたことないくせして
喧嘩でもしたのか
…千瑚のせいでかなりの時間ロスした…
暑い死ぬ…
早く駄菓子屋…
『お客様へ
おじちゃんとおばちゃんは海外旅行に行ってきます。
探さないでください。
おじちゃん達はいつもみんなの心の中にいます。
駄菓子屋 ささやま』
耀渡「…………………………」
よし、帰ったら尚に八つ当たりしよう。
うん。
今の俺なら許されるはずだ。
超笑顔であいつのスマホ持ち去るわ。
…はぁ…しょうがない。コンビニ行くか…
トントン、プニ
肩を叩かれたので振り返ったら、はや(疾風)が超笑顔で俺の頬をぷにっと押した。
疾風「ごえん!!!ごえんて!!わうかっあかああああ!!!」
耀渡「こっちは超イライラしてんだからそういうのやめろ」
疾風「ひゃい…」
三男・疾風は兄弟一明るい。てかうるさい。
運動も勉強もできる所謂文武両道。
別の会社だけど俺と似たような仕事をしてる。
ちなみに頬は柔らかい。
久々に抓ったな。
疾風「あれ、ささや閉まってんじゃん!」
耀渡「だからコンビニ行こうと思ってな」
疾風「じゃあジュースよろしくね!!(≧∇≦)」
耀渡「待たんかいこのバカはや」
疾風「ぐえっ!パ、パーカーのフード掴むのはなしでしょ…!何…?!」
耀渡「よろしくね!!じゃねぇよ、付き合え」
疾風「やだあああ!!俺はクーラーに風邪引くまであたるんだあああ!!」
耀渡「風邪ひいたらアウトだわ」
俺は、はやを引きずり、コンビニまでたどり着いた。
それまで何回信号で止まったことか…
疾風「1回だよ!!早く中入ろ!!」
耀渡「おう…死ぬ…」
アイスコーナーまでたどり着いた俺は頼まれたものをカゴに入れ、レジに向かった。
あと買うものは…うん、ないな。
疾風「ようのいじわるうぅぅ!!!」
俺の鉄槌が疾風の頭に下った。
もちろん迷惑だから。
まぁここにいる人達はほぼ俺らが小さい頃から知ってる人だけど、さすがにな、うん。
耀渡「うるさい、はよ持ってこい」
疾風「了解しやした!(`・ω・)ゞ」
なんだあの顔。
ほんとにアイツ23か?
ほんとに高2共の兄貴か?
…まぁ、あの笑顔がなきゃ俺もここまで来れなかったかもしれないな…
うちの両親と3つ子と同い年の幼なじみ両親楽器で同時に殺されて、色々忙しかった俺の代わりに弟達の世話をしてくれたのがアイツを初めとした4つ子のほかメンツだったからな…
しかも俺が母さん達を亡くして初めて泣いたのが一年後で____
[両親が亡くなって約一年後(耀渡当時17)]
一夜「よー君、一周忌の準備するから手伝って」
耀渡「…一周…忌…?」
こいつはいとこの高橋 一夜(いちや)(当時20)。
俺が生まれた時から家にいる、もう兄貴と同じ存在の人。
一夜「あれ、知らん?てか前教えんかったっけ?」
耀渡「い、いや、知ってるけど…もう…一周忌?早くね?」
一夜「一周忌って、だいたい2ヶ月くらい前から準備するって忍が言ってた」
耀渡「2ヶ月…前…」
もう…そんな経つのか…
母さん達が死んだことが、未だに信じられてなかった。
あの大量の赤黒い何かを見たのが、昨日の事のように思い出す。
またいつもの様に、笑顔でドッキリという札を持ってタンスから出てくるのではないか、ケーキを持ってくるのではないか、そんなことばかり考えてしまう。
一夜「…お前は、料理の注文を頼んだよ。それだけやってくれればいいから。今日じゃなくても今週中ね」
耀渡「…おう」
あれから、ずっと俺は仏壇の前にいた。
ひー(一夜)と話してから約2時間、ここでずっと写真を眺めていた。
トントン、プニ
肩を叩かれたので振り返ったら、はやが優しく微笑んで傍で正座をしていた。
耀渡「…なに?」
疾風「なんでも〜」
耀渡「…あっそ」
ムニッ
はやの頬をつねってみた。
疾風「ようー?やめてぇ〜」
耀渡「…」
疾風「うごん?!w……!!」
足に、何か液体が垂れた。
汗か?確かに今日は猛暑日だ。
…違う。
俺は、何とか堪えた。長男だから、泣いてる場合ではない。
疾風「長男って、泣いちゃダメなの?」
耀渡「…へ…?」
疾風「長男は、強くなきゃいけないの?何もかも我慢しなきゃいけないの?」
耀渡「はや…?」
疾風「ねぇ、それって誰が決めたの?」
耀渡「…」
初めて疾風の言葉が、心に響いた。
いや、人の言葉と言った方がいいのかもしれない。
今まで言葉は耳に入ったもののそのまま反対の耳から出てってしまっている状態だった。
さっきのひーとの会話もそうだ。
ほぼ聞いていなかった。
授業も、部活の顧問の言葉も、友達の話も、弟達の話も、全部聞こえていなかった。
実際には聞いていたが、その殆どを覚えていない。
疾風「…ようはさ、あの日も含めて、泣いてないよね?俺見てないもん」
耀渡「…涙が出ないんだよ。まだ、信じてもない。いつか帰ってくるんじゃねえかって、また、ふざけたことして、4人で出てくるんじゃねえかって…」
疾風「…俺もだよ。今日とか特にね…wだって、今日誕生日だし…また祝ってくれるんじゃないかって…話してもない欲しいもの準備してくれてるんじゃないかって…思う」
耀渡「…」
疾風「……言いたくないけどさぁ…思いたくないけどさぁ…もう……いないの……母さん達は…もういないの……死んじゃったの……」
そう言うと、疾風の目には、涙が浮かんでいた。
はやが泣いてる…
泣き止ませないと…
疾風「泣いていいよ、耀渡…」
耀渡「!!」
疾風「俺みたいに…泣いて…?」
必死に堪えた何かが、一気に溢れ出した。
この時、初めて泣いていることを実感した。
高校生にもなって恥ずかしい…
でも…今日くらいは…
[現在]
…なんちゅうタイミングで俺はこれを思い出してんだ。
ただ俺はアイスを買いに来ただけだぞ。
…あ、今度お線香も買いに行かなきゃなんねぇなぁ…
あとライターもか…うち誰もタバコ吸わないからな…
疾風「はい!これ!」
耀渡「お、おお…ってなんで2本…」
疾風「後で金渡すからって忍が!」
耀渡「あいつ…」
透坂忍(とうさか しのぶ)といって、うちの両親が施設から預かった子らしい。
なんならもう兄貴だな。
本人曰く居候らしい。
まぁ…俺らと苗字違うしな…
ちなみに一夜と同い年で古典の教師をしている。
耀渡「はぁ…あと買うもんは?」
疾風「ないです!」
耀渡「ホントかー?後で買い忘れたっつっても買いに戻らないぞ?」
疾風「大丈夫!!( •̀ω•́ )و」
俺はそのままレジを済ませ、コンビニを出て、帰路にたった。
…?何か忘れてるような…
疾風「?俺の顔になんか着いてる??」
耀渡「…いや、俺と同じ顔に、俺にはない眼帯が見えるよ」
疾風「いつもどうりですな!!」
耀渡「…そうだなw」
…俺が今こんなに笑顔になれるのも、こいつのおかげだ。
あとでなんか奢ってやるか…
…てかほんとになんか忘れてるような気がする…
ま、いいか。
疾風「よぉし!!信号越えたらどっちが先に家着くか勝負ね!!元バスケ部エースの耀渡もまだ鈍ってないっしょー??w」
こんな猛暑日に走るの嫌なんだが…
耀渡「煽ってくれるじゃねえのw上等だw」
そして、ここで俺がバテて負けたことは言うまでもなかった。
ほんとに、こいつだけじゃなくて兄弟達には感謝してる。
あ、もう何回も言っててしつこいか。
でもそれくらい感謝してる。
こいつらいなかったら、俺はこんなに笑顔で大人にもなって走ってられなかった。
ほんとに、本当に…ありがとう。
ずっと…大好きだ。
そう心で呟き、疾風に肩を支えられながら家に入っていったのだった。
____第1話END
________おまけ
蒼斗「疾風兄達おかえりー」
悠「耀渡支えられてる…w何があったの…w」
千瑚「にゃー」
菜都「わん!!!」
耀渡「あ」
疾風「ただいまぁー!!蒼斗ー!悠ー!ちー!菜都ー!」
なぁんか忘れてると思ったらこいつら2匹の分…
千瑚「(<●>ω<●>)」
菜都「(∪・ω・)??」
ごめん、マジでごめんて、後で冷えたやつ持ってくるから…汗
そんな目で見ないでくれ…汗
その後きちんとあげました。
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