6-2
※ ※ ※
「なんたらかんたらで~~君が好き~~♪」
なごみはご機嫌に謎のいい加減ソングを歌いながら、長い廊下をローファーの軽い足音を響かせて歩いていく。
なごみもこの本局の“一部”はとてもよく理解していた。
今も彼女にとって関係のある場所を目指して、歩みをスキップに変えて進んでいる。
そのドアの上に掲示された室名札に書かれている室名は、『休憩室』。
この一階の休憩室は主に捜査官たちが利用する休憩所で、今は無人である。
その無人の部屋の明かりをつけ、なごみは意気揚々と部屋に入る。
部屋は比較的小ぢんまりとしていて、テーブルがひとつ、向かい合うソファがワンセット。観葉植物や加湿器も置かれ、
部屋の一角にはシンクもあり、コンロはないが電気ケトルがあるので、
なごみは手慣れた様子で電気ケトルを手にすると、水を入れて湯を沸かし始める。そしてしゃがみ込むとシンクの下の戸を開けた。
そこには、
そうしてなごみはテーブルの上にバスケットを置くと、その蓋を開けた。中には、高そうな陶器のティーセットと紅茶の缶が。
「へっへ~。ゆきめちゃん秘密のティーセットぉ~♪」
なごみはにへらにへら緩んだ表情でポットやらを取り出すが、ふと表情を変える。
「あっ! ゆきめちゃん、なに買ってくるんだろう……? もしかして緑茶が正解……? でもでも、“スイーツ”っていってたんだからきっと紅茶だよね! うんっ! ……でも、“和スイーツ”なのかもぉ……」
なごみはそうやって両手にカップを持ったまま自問自答する。
本人にしてみたらいたく真剣な悩みである。
――と、なごみがそうやってうんうん唸っていたところ、なごみの左側から“キンッ”という小さな音がした気がした。
なごみは反射的に音がした方を振り向くが、何もない。
この部屋は位置的に施設の中央辺りにあるので窓もなく、そこには白い壁と観葉植物が物言わずあるだけだった。
なごみは首を
何か金属質の物が床に落ちたような音だったので、なごみはティーカップをテーブルに置き、ソファの端に乗っかってソファの陰を覗いてみるが、何もない。
なごみはもっと詳しく調べてみようとソファから降りる。
そうした直後、電気ケトルのシュンシュンと湯気を吐き出す音と共に、湯が沸いた合図であるカチリとボタンの下がった音が聞こえたので、なごみは振り返る。
――目の前に広がったのは、バラバラに砕けた世界。
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