青と春

あなん

第1話

大学も夏休みに入り1週間と半分が経過した頃君から「ひまわり畑が見たい」と連絡が来た。いつにする?と僕が聞くとじゃあ明日なんて言うのだ。でも君が言うから「明日10時に駅で」と約束して眠った。

駅に着くと君はとても嬉しそうにこちらに走ってきた。軽く挨拶をしてバス乗り場までゆっくり歩く。2人で蝉の声が鳴り響く空の下で待っていた。少ししてバスが来る。最初は10人ほど乗っていたのに気づいたら僕は君と2人きりのバスになっていた。僕は少しドキドキして心臓が爆発してしまいそうだった。君はそんなこと知ってるのか知らないのかわからないけど僕の肩に寄りかかって気づいたら寝ていた。君はとても気持ちよさそうに寝ている。僕はひまわり畑まであといくつの駅へ行くのか、あとどれくらいの時間君の寝顔を見れるのかと考えていた。

それから1時間くらいでひまわり畑に近いバス停に着いた。僕らは暑い夏の日差しの下肩を並べて歩く。君は暑そうに汗を拭う。僕は君の汗を舐めてしまいたくて仕方がなかったが一応道だと暑苦しい日差しに照らされた頭が僕に警告をしてくる。僕はその警告を無視しようとしたが君が僕の方を向いて

「暑いね。大丈夫?」

と首を傾げて聞いて来た。僕は驚いて何もいえなかった。君がねぇ?と悪戯っ子のように笑う。僕は目を君から逸らして

「大丈夫...だよ....。お前は?暑くない?」

君は少し笑って

「大丈夫だよ。君の影が僕を守ってくれてるから!良いなぁ、僕も君くらい背が欲しいな。」

僕はそんなこと言われたことがなかったからドキッとして

「お前はそれくらいで良いんだよ...かわいいな...くそ....」

と小さく呟く。君は首をかしげる。僕は慌てて背が高いと高いで困ることをぼそぼそと君に伝えた。君は笑って背が低いと困ることを少し背伸びをしながら僕に伝える。僕はその姿が愛おしくて抱きしめた。君は少し驚いた表情をして笑いながら僕を抱きしめた。君は少しして暑いね。と呟いて手を離した。僕は君の手を掴んでこちらを向かせてキスをした。少しの間時間が止まったように感じ、僕らはキスが終わっても目を見つけあったまま立ち尽くした。蝉がうるさい。歩こうかと僕は君から顔を逸らして手を差し出す。君は僕の手を掴んだ。僕らは蝉が鳴り響く誰もいない8月の青空の元をただひたすらに歩いた。

段々と暑さが気にならなくなった。僕らは手を繋いだまま歩きヒマワリ畑へ向かう。少し先にヒマワリが見え隠れした。君は嬉しそうに走っていく。僕も後を追うが足が速く追いつけない。君が見えなくなる。ひまわりが邪魔だと心底思った。

僕はひまわり畑を歩き続ける。でも君は見つからない。日が傾き始めた。最初にいたところから随分と遠くまで来たと思うが、見つからない。ふと前を見ると大きな木が一本ポツリと立っていた。ひまわり畑に似合わない木だった。その木の下を見ると彼が座って眠っていた。木が上手く日陰になってくれていたらしい。僕は安心してそこに座り込む。彼の寝顔はとても可愛らしくてこのままでも良いと思った。彼を起こさないように羽織っていたシャツを優しくかける。彼の頭を優しく撫でおでこを出し唇を添える。それでも彼は起きることなく小さな寝息を立てていた。

「このまま2人で居れたらいいのに」

そう心から思う。

でも空には星が瞬き始め紫色の空が辺りを包んでいる。このままいたら風邪をひいてしまう。僕は彼を起こさないように抱きかかえ来た道を引き返した。

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