間章

人物・設定集(2章までのネタバレ含)


□用語

・虹

 東京湾にかかる大きな虹。虹素という不可視の物質でてきている。雨が降ろうが日が沈もうが消えることは無い。今から87年前に現れて以来、人類の生活に影響を及ぼしてきた。虹が生まれた原因は不明である。


・虹素

 虹から生み出される不思議な物質。人の願いを叶える力がある。その力が転じて、人の悪感情に晒されると黒く変異、虹化体という化け物を生み出す。

 人間生活に対しては、「万能物質」として様々な利用をされている。実際に「傷を癒す」願いを込められた包帯やガーゼなどが普及しており、骨折くらいの怪我なら一晩二晩で直してしまう。

 ただ、虹素自体は人体に有害である。体内に一定以上蓄積してしまうと、感情に引きずられて虹化体になってしまう。人が虹化体になることを虹化という。


・虹化体

 ドロドロとした黒い不定形の、虹素でできた化け物。アメーバやスライムのような見た目をしている。目と口だけが赤い。体内にある核を潰せば殺すことが出来るが、逆に、核を潰さない限りはいつまでも周囲の虹素を材料にして復活する。

 特徴としては、銃器等の兵器がほぼ通用しないことが挙げられる。銃で撃てば体に穴は空くものの、すぐに復活してしまうからである。核は柔軟性があり、かつとても硬く、専用武器である蜺刃以外では壊すことは出来ない。

 核を潰すと虹素は流動性を失い、虹晶という宝石状の黒い物体に変わる。破虹師はこれを回収し、虹化体の再発生を防ぐ。

 虹化体が大量に発生した状態だと、周辺の虹素をも含めて虹化体同士が共鳴してしまい、復活が早くなる。


・大罪虹化体

 「憎悪」や「食欲」など、単純な欲望の権化である虹化体には理性や思考能力がほとんどないが、七つの大罪に代表されるより強く人間的な欲望から生まれた虹化体には高度な知性が宿る。それを大罪虹化体と呼ぶ。通常の虹化体と区別し得る特徴的な見た目を持ち、さらに人型をとることもできる。

 虹が生まれてから今まで、単独で大罪虹化体を討伐できた人間はいない。


・蜺素

 虹素を壊す願いを込められた虹素。その特殊性から別名が与えれている。破虹師の戦闘服や蜺刃の主成分である。虹化体の核をも壊すことが出来る。

 自然虹化を防ぐために、人間は生まれるとすぐこれを接種される。また、虹素の被曝量が特に多い破虹師たちは、それでも防げない虹化を防ぐために蜺素顆粒という粒状の蜺素を携行している。俗にARTと呼ばれる。

 蜺素の製造には大変な願いの力が必要になる。それを唯一行えるのは聖虹教会の聖職者だけであり、もっぱら蜺素は教会に専売されているという。


・破虹軍/破虹師

 破虹軍は破虹師の詰所である。各県に1つずつ支部があるが、千葉支部はしがらみにより東京内にある。全国の支部をまとめあげる東京本部長のことを総帥と呼ぶのが習わし。

 虹化体を倒すのが組織としての使命である。その危険性から志願は高校卒業後でないと出来ないことになっているが、名のある人物からの推薦があればそれ以下の年齢でも破虹師になることが出来る。

 破虹師の中でも特に戦闘能力や忠誠心、そのた特殊能力を持つ人間は北斗七星という称号が与えられる。禁書庫閲覧権と大罪虹化体との交戦権という特権が与えられる。市民からは英雄のように見られる。


・天恵

 虹化体の「虹素を操る力」が一部人間に宿ったもの。超能力のような力が使える。能力使用中は瞳の色が赤くなる。現在特に副作用のようなものは報告されていない。


・聖虹教会

 虹を信仰する宗教。蜺素の専売を行っている。教祖代行という形で司祭が組織を動かす形をとっている。体内に蜺素を接種し虹化を防ぐことを「試練」と呼んでおり、それに打ち勝って虹化体となることを「虹に還る」として人類が到達すべき地点と考えている。

 教会としてはあくまで蜺素は平和的な利用を求めており、武器に転用している破虹軍とは仲が悪い。



□人物


・相友慧央(あいうえお)

 18歳。家族を殺されたショックからか、7歳〜12歳程までの記憶を失っている。中学卒業後に破虹師になる。シスコン。8月25日に妹を憤怒の虹化体に殺され、謎の少女の力で7月7日にタイムスリップする。地下街探索の結果、北斗七星になる。

 タイムスリップする際に自身も1度殺されかけており、虹化体に身を堕としている。理性が残っていることから、自分は大罪虹化体なのではないか? と疑っているが、何の罪を宿しているのかまでは分かっていない。


・相友依呂葉(あいういろは)

 17歳。慧央の双子の妹。8月8日生まれなので、まだ18歳ではない。慧央と同じく中学卒業を機に正式に破虹師になる。7歳の時に一族郎党を虹化体に皆殺しにされており、憤怒の虹化体に復讐を誓う。

 軍ではアイドルのような扱いを受け、ファンクラブまである。しかしその実亜門に次ぐほどの戦闘能力を持ち、周囲からの信頼も厚い。《虹殺しレインボーブレイカー》という特殊な篭手・ブーツ型の蜺刃を使用し、超近接戦闘を好む。

 《予言》という天恵を持ち、未来予知ができる。


・弓手嚆矢(ゆんでこうし)

 23歳。破虹軍総帥。16歳の時に入軍して1年で総帥の座をもぎとり、以来7年間総帥を務めている。整った容姿とカリスマ、巧みな話術で人の心を掴んで離さない。戦闘能力も卓越していると見られる。

 常にサングラスをかけているほか、プライベートでは一年中赤いアロハシャツとビーチサンダルを愛用している。


・山田太郎(やまだたろう)

 19歳。世代としては慧央の2つ上である。実は破虹師歴は2年目であり慧央の後輩にあたる。左目の下にある泣きぼくろだけが特徴的な少年。

 「魔法少女ナミナミナミナ」という特撮魔法少女アニメの大ファンであり、かつロリコンである。10歳の少女だけを性的対象にしている。

 《均衡》という天恵を持っており、容姿や能力その他全ての要素が周囲の人間の平均になってしまう。常時発動しているので本来の瞳は赤いのだが、周囲に合わせて瞳の色も茶色に見えている。泣きぼくろだけは彼自身のものらしい。

 この力を応用して他人の心情を読むことが可能。弓手にこの特殊能力を買われ、大した強さはないが北斗七星に選ばれている。


・亜門左門(あもんさもん)

 43歳。日本最強の名を欲しいままにする破虹師。北斗七星筆頭という肩書きを持つ。「弱きは罪だ」という信念を持ち、実力のない新人に威圧をかけて辞めさせてしまう。慧央と依呂葉には特に当たりが強い。

 鎧型の蜺刃を纏い、たった1人で虹化体の群れの中に突っ込む。そして必ず生還してくる。伝説の男の名が相応しい。


・久世世世(くぜよよ)

 25歳。慧央と依呂葉の義母であると同時に、破虹師 軍の技術課と医療課を取り纏める仕事人。戦闘服や蜺刃の性能がここ数年急速に上がってきているのは彼女の働きによる。実は弓手と同期らしい。

 ネーミングセンスと生活能力が欠如している。破虹師が戦闘後に虹晶を回収する掃除機のようなデバイスは、彼女によって「ナナソン」と名付けられてしまった。


・玉置環(たまきたまき)

 16歳。地下民の生き残り。語尾に☆がつく話し方をする。7年前に起きた地下街の一斉封鎖で家族を失い、以来人間を憎んでいる。《地下街の悪夢》の犯人。


・綾間こころ(あやまこころ)

 17歳。破虹軍の受付嬢。「ごめんなさい」が口癖。


・蘭堂来弥(らんどうらいや)

 年齢不詳。10代後半〜20代前半と見られる。慧央と一緒に大掃除に向かったが、生還した慧央からは蘭堂の記憶がきれいさっぱりなくなっていた。


・千賀(ちが)

 下の名前は不明。18歳。慧央とは中一の頃からの腐れ縁。真夏でも真冬でも厚着をしている。


□事件


・災害

 天候や地震による自然災害とは別に、虹化体による被害のことも現代では災害と呼んでいる。


・千葉大災害

 相友一族が双子を残して全滅した事件。《憤怒》の虹化体が引き起こしたとされる。

 実際には事件現場から救出されたのは依呂葉だけであり、慧央はその後3年間行方不明になっていたのち、世世にどこからか見つけ出されたという経緯がある。

 相友家本邸の周辺は虹素濃度が7年経った今でも基準値を大幅に超えて高く、立ち入り禁止となっている。


・地下街封鎖

 7年前に弓手総帥が、破虹軍の整備によって最早無用の長物になっていた地下に火を放った。これにより地下にいた地下民は全滅したはずだった。


・地下街の悪夢

 慧央の行動によって未然に防ぐことが出来た事件。7年間封鎖されていた地下街から虹化体が大量に溢れ出てきて、当時大掃除をしていた破虹師は全滅、市民にも大量の死傷者が出た。千葉大災害以来塗り替えられていなかった災害による死傷者数の記録を塗り替えた。

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