漣霞


 

 あたしは漣霞れんか。とっても賢くて美しくておしゃれな狐精こせいよ。

 近づかない方がいいわ。あまりの美しさに魅了されてしまうから。


 あたしは誰からも好かれるかわいい人気者――のはずだったんだけど、ちょっとした行き違いと嫉妬から仲間はずれにされちゃってね。

 まあ、美しさって罪、ってやつかしら。

 あやかしたちには逃げられたり無視されたりしたんだけど、あの子が来てからね。人気者に戻ったのは。


 まあ、あの子には感謝してやってもいいわ。あたしが料理の才能に目覚めたのは、玉玲のおかげでもあるから。

 あやかしたちはあたしが作った絶品料理を、おいしい、おいしいって食べるようになっちゃってね。みーんなあたしの料理に夢中――って、何よ、その目は? あたしが嘘をついているとでも言いたいの?


 まあ、いいわ。そんなこんなでね、あやかしたちはあたしを受け入れるようになってくれたの。

 玉玲はあたしたちの仲を取り持ってくれた。

 だから、あたしも幻耀様との仲を取り持ってやりたいところだったんだけど、あの子ったら彼の求愛を拒んだのよ。信じられる? 絶対幻耀様に惹かれているはずなのに、もう見ていてやきもきしちゃうわ!

 もしあたしが人間だったら即落ちしてたわよ。あやかしのあたしから見てもすごく素敵な方だもの。なのに、玉玲の分際で……!


 あの二人がくっついてしまったらいいのに。そうすれば、三年たったら北後宮から出たいなんて思わなくなるでしょう? 玉玲がいなくなったら――(ハッ!?)

 べっ、別に寂しくなるとかじゃないんだからね!

 あたしの絶品料理を補佐する召使いがいなくなったら困る、ええ、それだけのことよ! 

 あたしの料理が行き渡らなくなったら暴動が起きるもの。

 そのあたり、誤解しないでよね!


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