おじさん、やっぱりお隣さん。を見てしまう

ここです。

短編 おじさん、やっぱりお隣さん。を見てしまう


僕は30過ぎのおじさんで、毎日、社畜として、電車に揺られ、仕事に精を出す。平日は仕事以外、他にすることは、特になかったせいか、いつしか、土日の休暇も、休日出勤という名の、僕の仕事のみという変化のない日常へと移行し、休日なんて言葉はなくなってしまったそんな生活を繰り返す。


それでも、僕にはひとつだけ趣味ではないが、唯一の安らぎがある。


それはとなりの高校生の女の子。お嬢様学校といわれるところに通う18歳の女の子。隣で一人暮らしをしてるらしい。そんなお隣さんとは毎朝、通勤、通学時間が一緒なのか、いつも玄関先で挨拶を交わす。


「おはようございます。」


互いに同じ言葉で挨拶を交わし、素敵な微笑みを僕にくれるお隣さんは自転車で、僕は駅へと向かう先は別、それぞれに出掛けてく。


いつも出会うお隣さんは、綺麗で、清楚で、思わずぼーっと見入ってしまう。こんなおっさんが、見入っていれば、犯罪だといつかは捕まってしまいそう。そう思うも、やはりお隣さんを見てしまう。


それが、僕の毎日の唯一の安らぎ。ぶっちゃけ良いことではないとは思いながら。


駄目だな、今まで誰とも付き合ったことのない女性に免疫のないおじさんは。嫌われないよう、眺めるのは辞めなくちゃ。いつもいつも、そう思ってはいるものの、やっぱりお隣さんを見てしまう。


年齢を考えろ。お隣さんから見れば、ただの気味悪いおじさんでしかない。10代のアイドルにハマるおじさんのように、絶対に気持ち悪く感じられるだろ。等とそう思う反面、年齢とかそういうのは関係なく、純粋に、お隣さんのことを気にしてしまう僕がいるのだった。


それでも、

やっぱり僕はおじさんで

お隣さんは高校生。


知られてしまえば、気味悪がられることはわかってる。


けれど、ただ毎朝の挨拶だけは、少しでも長く続いてくれたらと、矛盾した心と戦いながら、また、仕事という戦場へ向かっていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おじさん、やっぱりお隣さん。を見てしまう ここです。 @kokotangpu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ