第14話:任務完了
――数時間後――
「……ふ、ふひぃ〜、これもう取るとこねえんでね? フレデリカさんよぉ〜?」
「もう……どうにでもなれってのよ……、ぐすん、お嫁にいけないよぉう」
肉体労働中のタクヤとフレデリカは鼻くその採取で疲れ果てていた。
「もうこれギルドの仕事ってより工事現場の仕事だよな。携帯してるマジックポケットもいっぱいだしここが潮時だな」
「そうね、私の分もいっぱいだわぁ」
「うう、私も疲れたのです〜。魔法の術を維持できないのですぅ」
三人とも各々疲労を見せていた。
「トロルさんよぉ! もう鼻の中は綺麗になりましたですぜぃ! もう出ますよ!」
「ふがふが……、わかった! 今つまみ出すからちょい待ち! よいしょっと……」
タクヤたちは1人ずつ順番にトロルの鼻腔内から手でゴミのようにつまみ出された。
「どわっ! いててて……!」
「しゅたっ! ハイ!着地!」
「しゅたっ、ですぅ! 10点満点ですぅ!」
「お、お前ら……、今までの疲れはなんだったんだ? はぁはぁ」
ルゥルゥとフレデリカは鮮やかに着地を決めたが、タクヤだけは先頭だったので心の準備ができておらず、着地の際バランスを崩し転倒。
「すーすー、すごいどー! 鼻が久々にスッキリだぞぉ! これでよく眠れるぞぉ!」
ギガント・トロルは、綺麗に清掃された鼻腔でスムーズに呼吸を繰り返す。
心なしか気分は良さそうである。
「それにしてもお前ら、仕事が早かったなぁ!とりあえず今回の件は見逃そう。……ついでなんだが、名はなんと申す?」
ギガント・トロルは突然武士のような聞き方で質問をする。
「タクヤ、タクヤ・シムラだ」
「ルゥルゥですぅ!」
「ふ、フレデリカよぉ!」
なぜかフレデリカだけ少し嫌そうな表情で答えた。
まあ、なんだか求愛されたようだしな。
「しかと聞いたぞ。オラの名は、サイクロウ」
サイクロウ、同じ魔神族なサイクロプスと間違えそうな名前だ。
「すっきりはしたのだがな、もう二度とオラの前に面を出すなよ? 人間にはもううんざりなんだ」
「ああ、俺たち冒険者の派遣元のギルド酒場にも言っておくから安心しろ。お前に手出しはさせないよ」
「あ~あ、せっかくSSランク冒険者に格上げできるかと思ったのにぃ~」
フレデリカのSSランク冒険者格上げの条件は、星5ランク魔物の討伐だと確定で昇給できる。その星5ランクの魔物には、ギガント・トロルも含まれている。
彼女は彼女にとっては折角のチャンスを棒に振ってしまい落胆する。
「くっくっく……、俺の方は報酬ガッポリだから問題なしだがな」
タクヤは小声で本音がボロリ。
「タクヤ様、普通にこちらに聞こえてますよ」
ルゥルゥは冷ややかな視線をタクヤに送った。
「そんじゃ、酒場に連絡してっと……、もしも~し、ええっ! ハイ! ……わかりました~」
タクヤは魔導通信端末を用いて、ギルド酒場の受付嬢の人と連絡を取り、帰還用の転送魔法陣の手配を完了させる。
「ルゥルゥ、フレデリカ! 転送魔法陣は神殿の出口から200メートルほどの茂みの中に発生させるから、アプリの地図を参照して探せとのことだ、行くぞ」
「あ~い、わかりましたですよ~だ」
「はいですぅ~」
――神殿を出て――
「さ~て、帰ってからどうしようかな、と」
「たっくん、お給料は確実に入るんだし、ちょっと一杯付き合いなさいよぉ」
「お前の一杯は、大量って意味の一杯なんじゃないか?」
「こないだ、美味しそうな空魚の刺し身が食べられるお店見つけたから、……ここよ」
フレデリカは魔導通信端末のアプリを起動させ、登録していたお店の写真を表示させた。
確かに美味しそうなのだが。
「……おい、これいくらになるんだ?」
「1万は、軽く行くわね」
た、高い……
タクヤはちょっとだけ冷や汗をかく。
するとタクヤの袖をちょいちょいと褐色の小さな手が引っ張る。
「タクヤ様、ちょっとだけ忘れ物がありますので、転送魔法で取りに行ってきますですぅ~、先に戻ってくださいませ」
ルゥルゥは小声でタクヤに言い残し、さっさと転送魔法でこの場から一旦消える。
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