扉の向こうは不思議な世界?
ぬまちゃん
第1話 誰の世界?
目覚ましを無理やり止めて、ベッドから無理して起き上がる。昨日夜更かししたから、朝が辛い。だって、あそこでイキナリのドンデン返しだぜ?
あそこまでは、仲間として、色々な場面で助け合って来たのに、最後の場面で「実は俺が首領だ」って。
そんなの信じられないよな! 普通そこまで来たら、後はハッピーエンド的な大団円に入って欲しいじゃん。もう、そうなったら、後は一気読みしないと、逆に続きが気になって眠れない。
クッソ〜! アイツに騙された!
このラノベ面白いぞと言われて借りたけど、結局一気読みして寝たのは明け方だもんな!
えー、二時間しか寝てないじゃん。午後の授業は全滅だな……
後で、クラスで一番ノートが綺麗な女子から写メするしかないか。
寝ぼけた頭で色々考えながら、トイレに行こうとして自分の部屋の扉を開けた。
***
そこは、廊下では無かった。
俺の家でさえ無かった。
目の前には、クラスで一番ノートが綺麗な女子が、両手で口を押え、驚いた状態で俺を見ていた。人間って、本当に驚くと声が出ないって言うのは、本当の事なんだ、と思った。
クラスで一番ノートが綺麗な女子は、上下お揃いのピンクの水玉が入ったパジャマを着ていた。
胸の部分の膨らみが大きいのは両手で口を押えているからだろうか、それともパジャマのサイズが少し小さいからなのだろうか?
それにしても、パジャマ姿が結構似合ってて、すごくかわいく見えたので、自分でも驚いてしまった。
俺と同じ様にベッドから起き上がり、自分の部屋から出ようとしていたら、突然扉が開いて俺が入ってきた、そんな感じだ。
俺は、慌てて後ろを振り返った。確かに、後ろは俺の部屋だよなぁ?
確かに俺の部屋だ。その証拠に、ちょっとエッチなピンナップポスターが壁に貼ってあるのが見える。
ヤバイなあ、この位置からだとクラスで一番ノートが綺麗な女子から、俺のポスターが丸見えじゃん。
イヤイヤ、この際そんな事はどうでも良い。この状況を打破する事を考えよう!
多分、このまま一度扉を閉めてみるというのが、正解なんだと思う。お互いの扉がくっ付いたのは俺のせいじゃあ無いから、謝りようが無いけど。
一応、朝の挨拶をしてから、なんかよくわからないけど、女の子の部屋にノックもしないで入った事に対して謝ってから、退散するか。
「えー……と、」「おはよう!」「ごめんなさい!」「さようなら!」
それだけ言って、扉を閉めた。少し時間を置いてから、もう一度、廊下に出るドアを開けた。
今度は俺の家の廊下があった。まあ、普通はあるよな? って感じだ。
さっきのアレは、夢か? 確かに寝不足でボーッとしてたし、クラスで一番ノートが綺麗な女子は驚いていただけで、俺と会話もしていないし。
夢だったといえば、夢かもしれない。
驚いた時の、クラスで一番ノートが綺麗な女子の顔は、決して学校では見せない顔だったしなあ〜。あんな顔されたら、俺なら「いちころ」だな。
そんな事を考えながら、朝飯を食って、家を出た。いつも通学で使っている各駅停車が駅のホームに滑り込んできた。俺はいつも通りに、先頭から2両目の3番目の扉の前に立っていた。
ここの電車は、各駅と急行で、扉の来る位置が違っている。だから、駅のホームではみんな行儀よく電車が来るのを待っていられる、って寸法だそうだ。
以前は、各駅も急行も扉の位置が同じだったので、迷う人が多い上に、ちゃんと並んでいる人の横から割り込んで来る奴が結構いたそうだ。
とにかく、俺は確かに2両目の3番目の扉から乗ったはずだった。
***
乗り込んでから、直ぐにスマホを取り出してゲームをやろうとしたんだが、何かすごい視線を感じて、周りを見渡した。
驚いた事に、周りはみんな女の人だった。
俺が驚いていると、傍に立っているおばさんが、黙って扉の前に貼ってある、見た事があるシールを指さした。
そこには、赤い字で「先頭車両は、朝の通勤時間帯は女性専用車両です。女性と体の不自由な方だけお乗りください。」と書いてあった。
俺が、その文字を読んでビックリしていると……俺の傍にそっと近づいてきて、回りの女性達に、「不注意でごめんなさい」「私の友達なので許してください」「次の駅では必ず隣の車両に移動させますから」「次の駅まではこのまま大目に見てください」と言ってくれている女性がいた。
その女性は、クラスで一番ノートが綺麗な女子だった……
「あ、ありがとう。助かったよ。次の駅では、必ず隣の車両に移動するから」
(おかしいなー、先頭から2両目の3番目に乗ったつもりなのに?)
「それに、今朝は、ごめんな。俺もビックリしてしまって、何が起こったのか混乱しちまったんだ」
「いえ、そんな事ありませんわ。私も、貴方が突然私の部屋に入って来た時には驚いて声も出なかったんですけど。でも、後でよく考えたら、あれは貴方が起こした事ではないんでしょう?」
「それならば、貴方が謝る必要はありませんよ。それに、私こそ、何の挨拶もせずにごめんなさい』
扉の前で、二人でひそひそと今朝の件で会話した。
電車に乗っている女性達に俺の事をかばって説明してくれたからなのか、それとも今朝の事を思い出しているからなのか、その理由は分からないけど、節目がちに喋るクラスで一番ノートが綺麗な女子の頬は、少しだけ赤らんでいた。
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