三つ編み少女を煽ってみれば文明開化の音がする
@yunha
第1話
「立花琥輝です、よろしくお願いします。」
うわ、つまらなそうな奴。
多分この教室の八割はそう思っただろう。
そりゃあそうだ、あえて興味を持たせないようにしたからな。
ほう、男女共にあまり特徴は無く、静かそうなクラスだ。でもそういう奴らが一番めんどくさかったりもする。
「じゃあ立花さん、窓側の空いてる席を使ってくださいね、」
転校早々、これは触れない方が良いのだろうか、周りは誰一人として変な態度は取っていないし、まるでこの光景がおかしくないと、あたりまえだと思っているようにも見える。
物事に興味が無い俺でも流石にこれは困る。
隣の席、机の上には彼岸花。
と思いきやそこには人が座っている。
いじめだろうか、
そんなクラスにも担任にも見えない。
隣の席の机や椅子からも、いじめられている様子は伺えない。
うつ伏せになる隣の席の奴を、こっそり盗み見た。
黒いボブ、退屈そうな態度の女は、特に窶れた様子もみえない。
ふと見ると右手首に包帯が巻かれている。
関わらない方が良さそうだ、やっぱりここは危険区域か。
転校初日から困り果てた俺の心の声が、
そう呟いていた。
授業が終わると、
「立花さん、部活はどうするのかしら、」
と、若い女性の担任が、ふわっと光を吸い込んだような茶色をした髪を、妙に白い指先でくるりと巻いて俺を見た。
「部員が一番少ない部活は、どこですか、」
目立たない、第一目標だ。この世界は無知で無関心が得をするんだ。
派手な部活に入ってみろ、人間と関わらなければいけない。
部活には強制的に入ると聞いていたが、残念ながらそれは本当らしい。
部員が少ない部活を聞く生徒は珍しくないのか、普通な顔で
「読書部、かしらね」
と担任は俺の顔を見る。鮮やかな唇は、ついてきて、と言って読書部の部室まで連れてきた。
「佐加良さん」
佐加良と呼ばれた女性は長くて艶やかな髪を靡かせた。
「じゃあ私はこれで」
そう言って担任は出ていった。
ここから早く出ていきたい。
そう思ったように見えてしまった。
「佐加良菜乃花です。三年、よろしくね、」
「立花です、どうも」
美姫、そんな言葉が横切った。
その言葉に相応しい美しさと華やかさ、そしてどこか寂しげな彼女は、このおかしな学校で唯一の正常者なのかもしれない。
それに
必要なこと以外は話さない彼女の無口さが、人間嫌いの俺には心地よいものだった。
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