第59話 イチャイチャがウザい
―― イラッとするのう。
数百年間、ジレジレな茶番を繰り広げてきた
彼好みの衣装の色がどうだの。
不動明王の手作りスイーツが、いつもより甘いだの。
一緒に弥山に登った時、ついに手を繋いだだの。
―― うぜえ。
「メタボ〜」
「オタク〜」
「またですか、
「今度はどうされたんですか?」
「
「直球ですね」
「奥ゆかしくも遠回しな表現は止めたのですか?」
「我らは、あの2人に対してだけ気遣いを放棄する」
―― これは深刻だね。
―― 真面目に聞きましょう。
「……なるほど」
「そんなイチャイチャをわざとらしく目の前で繰り返されてイラついていると…」
オタク神主とメタボ先輩が、うんざり顔で返事をする。
「我らに共感したという顔つきじゃな」
「そりゃあ、まあ」
「で、何か考えはあるか?」
「出来るだけ顔を合わせないようにするしかないのでは?」
「付き合い始めは楽しくてしょうがないので、今は何を言っても…。この時期を越えて少し落ち着いたら冷静な話も出来るかと思いますよ」
「そんなに待てぬ!」
背後で叫ばれた。
驚いて振り返ると、疲れた顔の十一面観音菩薩だった。
「えーっと、もしかして…」
「
―― 詳しく話を聞いてみましたが、だいたい同じ内容ですね。
―― お互いの
「あの〜」
振り返ると困り顔の一願大師だった。
一願大師はお願い事をひとつだけ念じると叶えてくれるという尊い大師様だ。
「一願大師様、どうされましたか?」
「僕もだいたい同じ用件かな。
ウジウジ期間はずっと、思いが通じ合いますように…ってお願いされてて、僕の力が疑われるからチャッチャと付き合って欲しいと伝えていたんだけど、あの通りウジウジで。
念願叶ったので、もう来ないだろうな〜と思っていたら、もっとラブラブになりたいって代わる代わる現れては祈られて……。
あの2人に祈られると僕も商売上がったりで……困るんですよ。そもそも願いを叶えるために努力してもらわないと叶えようがないんですよね」
「…寺院の秩序を乱すようでは放置する訳にいかないですね。冷静にお話しできる状態か確かめるために会いに行ってきます」
こういう時、メタボ先輩は頼りになる先輩だ。
会いに行ったら、不動明王の住処の近くで遊ぶ鳥居ちゃんとミカエル君を見た。
2人は“ラブラブごっこ”をしていた。
毎日、目の前でイチャイチャする様子を見せつけられてウンザリだったが、鳥居ちゃんとミカエル君にしてみれば目の前でコントを披露されていたような感覚なのだろう。
「ミカエル君、今日の衣装はどうかなあ?」
いつもと同じ巫女服を着た鳥居ちゃんが、クネクネと質問すれば…
おもちゃの口髭を付けたミカエル君が
「鳥居ちゃんは何を着ても!いつも!可愛いぞ!」
「やだーミカエル君てばー」
棒読み&クネクネ。
不動明王に口髭はないが、誰がどう見ても不動明王と
悪気はないのだろうが、客観的に見てとても恥ずかしい。
そして、そんな2人を見て不動明王と
「鳥居ちゃんとミカエル君のごっこ遊びが終わったら話しかけてみましょう。思ったより早く解決しそうですね」
背後をついてきた仏像たちも一安心だ。
いたたまれなかったのか、早々にその場から逃げ出した不動明王と
「お不動さん、
「メ、メタボではないか!」
「なんだか久しぶりじゃな!」
先程の恥ずかしさを誤魔化すように元気よく返事をされた。
「鳥居ちゃんとミカエル君のラブラブごっこですが…」
「あ、あれは!」
「あの2人にも困ったものだのう!」
「いえ、困っているのは不動明王と
「……。」
「……。」
「そこらじゅうでイチャコラされているのが目につき過ぎて困るという声が多数寄せられまして…」
「な!ななな…」
「イ、イイイ、イチャコラなど……。!」
「されています。そこらじゅうで。毎日」
「……。」
「……。」
「それでですね、もう存分にイチャコラしていただいても良い場所を決めちゃいましょう」
真っ赤になって俯く不動明王と
「その場所とは包ヶ浦です。キャンプや海水浴も楽しめる家族連れにも人気のスポットです。
桟橋を挟んで神社や
それに不動明王と
「に、人間たちに加護か!」
「そ!そそそそれは良いな!」
不動明王と
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