第48話 兄から宅配便
「珍しいな、何だろう?」
オタク神主の兄から宅配便が届いた。
開封してみたら実家に置きっ放しにしていた『キャプテン翼』だった。
水族館で飼育員さんと『キャプテン翼』の話をして、懐かしく思ったことを兄とのLINEで話題にしていたので送ってくれたようだ。
「嬉しいなあ。久しぶりに読みたかったんだ」
「最近、オタクの付き合いが悪い」
不動明王の口から、自宅に居場所がなく部下や後輩を連れ回す嫌われ上司のような発言が飛び出した。
「彼には彼の都合があるんですよ」
「若いですしね」
「詮索するのは野暮ですよ」
「放っておきなさいよ」
無理に構わないようにと、他の仏像や僧侶たちから釘を刺されるも不満を隠しきれない不動明王。
「まあまあ。オタク君が忙しい間は同じ
メタボ先輩とのび太後輩が優しい。
実は最近、付き合いの悪いのはオタク神主だけではなかった。鳥居ちゃんとミカエル君もどこかに入り浸っているようだ。
―― 2人はオタク神主のところに入り浸っていた。
「ふう、やっぱり面白いなあ」
一巻から読み直して、現在は『キャプテン翼 ROAD TO 2002』を読んでいるオタク神主。引きこもっている理由は『キャプテン翼』を読み返したいからだ。
横ではミカエル君が夢中で読み進めていて、鳥居ちゃんは少し遅れた巻を読んでいる。鳥居ちゃんの好みに合うか心配だったが、楽しそうに尻尾を揺らしているので良かった。
「鳥居ちゃん、ミカエル君、お茶をどうぞ」
「ありがとう、オタク君」
「このコミック、とっても面白いね!」
ミカエル君が大興奮だ。
「ロベルト本郷との出会いは運命的だね、もちろん翼君たちが努力家な点も素晴らしいよ」
「私は翼君たちが中学生になったところまで読み進めたよ。ドライブシュートやタイガーショット、私にもできるかなあ」
「鳥居ちゃんは運動神経抜群だから練習すれば上手になるよ。今度サッカーボールを用意しようね」
「ありがとう!」
「その前に全巻、読もうよ!」
ミカエル君はどハマりしているようだ。
ミカエル君と鳥居ちゃんが全巻を読み終え、3人の引きこもりは終わった。
「あれ?あの2人!」
「随分と久しぶりに見た気がするな」
庭園の掃除中に鳥居ちゃんとミカエル君を見かけたメタボ先輩とのび太後輩。
祭神さまたちに買ってもらったサッカーボールを持った鳥居ちゃんが袖を肩まで捲っていた。
「いっくよー!」
「オッケー!」
「えいっ!」
鳥居ちゃんが凄まじい威力のタイガーショットを放ち、adidasのキャップを被ったミカエル君がキャッチする。
「今度は僕の番だよ!」
「オッケー!」
袖を戻した鳥居ちゃんが構える。
「ファイヤーショット!」
焦げたような臭いを放つボールを空手の技を取り入れた鉄壁のディフェンスで防ぐ鳥居ちゃん。
袖を捲っていたのは、日向小次郎のつもりで、adidasのキャップは若林源三のつもりで、空手の技を取り入れたような必殺ディフェンスは若島津健のつもりなのだろう。
ミカエル君によるカール・ハインツ・シュナイダーは金髪なので、もの凄く似ているような気がする。
「最近大人しいと思ったら…」
「キャプ
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