第30話 修道院のミカエル君
ミカエル君は、いつどんな理由で本体から分分かれて、いつからモン・サン=ミッシェルで人間たちを見守っていたのか覚えていないが、中世の頃にはモン・サン=ミッシェルに住んでいた。
中世の頃、修道士たちは聖書の研究や写本作り、祈りや労働に勤しんでいた。
「僕、写本作りを見守るのが好きだったよ。僕にも書けたら良いなあ…って」
「そういえばpetit(プチ)は飽きずにのぞいていたな」
「うん。とても綺麗な挿絵を描く人が定期的に現れたんだよ。皆んな、それぞれ個性があって素晴らしかったよ」
ミカエル君は久々に本体との、ゆったりとした時間を過ごしていた。
宮島での生活も落ち着いた頃、定期的に顔を見せに帰っておいでと本体が催促してきたのだ。面倒だな…と思ったが、帰ってみると本体が嬉しそうなので帰って良かったと思う。
「ねえ、お祈りの時間だよ」
「では一緒に見守りに行こうか」
修道士たちの祈りや労働を本体と一緒に見守るのは良いものだった。
「じゃあ、また来月ね」
「気をつけてな、向こうの皆なによろしく」
「うん、お土産ありがとう」
手を振るミカエル君の姿が次第に消えていった。
「お帰りなさい!ミカエル君!」
「ただいま、鳥居ちゃん」
「ミカエル君が帰省している間に向日葵が咲いたの!一緒に見に行こう!!」
元気な鳥居ちゃんに誘われて境内を歩いていると隣人の観音様と下っぱの のび太君とすれ違った。
「お帰りなさい、ミカエル君」
「ただいま、観音様」
「ミカエル君、おかえり!」
「ただいま、のび太君。」
ミカエル君は、待っていてくれるお友達がいる喜びと、お帰りなさいと言ってもらえる喜びを宮島に来て初めて知った。
引っ越して来なかったら、本体と一緒に過ごす時間が優しい時間であるということにも気づかなかったかも知れない。
いつまでも、この時間が続くといいなと願った。
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