もし私が絵描きだって言ったら、君はなんて言うだろう。

鄙瀨

非日常

「え…早川さん……?」

「…………」

「な、何やってんだよ?!

ま、まさか、これ……っ!」


いつもと、同じ、風景。

辺り一面飛び散る赤と、

あちこちに散乱した肉体。

最後のあがきを続ける人ならざるモノ。

鼻に香るは鉄の匂い。

鼻の奥を焦がすように、

濃く、噎せ返るほどの死の匂い。

ただ。

いつもと違うのは、そこに人が現れたこと。

それも、よく見知った顔。

自分のクラスメイト。

昨日も話した。今日も話した。

…きっと明日も話すだろう、そんな少年。


声は出なかった。

案外恐怖も、焦燥もなかった。

『見られたならば殺しなさい。』

それが掟で。

それが私の中の当然で。

いつもはそうしていて。

きっとその日も、

そうするはずで銃に手をかけたのに。


引き金は、引けなかった。


「帰って。」

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