カレーと悪魔

@orimorio0624

第1話

 夢を見ていた。空からクリームパンが降ってくる夢だった。夢は深層心理を表すと聞いたことがあるが、俺の深層心理はどうなっているんだろう。少し不安になる。

 どうしてその晴れのちクリームパンの夢から目が覚めたかといえば、大きな物音が俺の眠りを妨げたからだった。

 意識が覚醒する。重い身体をゆっくりと起こし、寝惚け眼をこすりながら、音のした方向を見る。

 人がいた。長くて黒い髪で、鈍色の瞳の綺麗な人だった。

 現在、俺は一人暮らしであって、この人は俺の家族ではない。ましてや友達でも、恋人でも、親戚でも、ない。では、この人はどちら様なのだろうか。もしかして、何かの勧誘だろうか。近頃の勧誘はいよいよ家の中にまで侵入してくるようになったのか。必死すぎやしないか。どっかの放送局よりタチが悪い。なんとかしてこの勧誘(仮)を追い払わねばと、思考を巡らせようとした時だった。


「こんにちは」


 話かけてきた。俺は完全にマックのハッピーセットのCM状態だった。

 いや、そら喋るよね。とりあえず挨拶を返す。


「コンニチハ」


 目が合う。曇天のような色の瞳。明るくはないが決して濁っているわけではなく、吸い寄せられそうになる不思議な瞳だった。


「あの、何かの勧誘なら間に合って……」

「強盗です」


 勧誘どころの騒ぎじゃなかった。


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