二人の時間
胡麻味噌豆乳ラーメンカルビを添えて
部屋
優気(ゆうき)・・・名付け親は彼の
両親。優しい子
に育ってほしい
勇気を持った子
に育ってほしい
という思いから
名付けられた。
結(ゆい)・・・名付け親は両親。い
ろんな人とつながっ
て(結ばれて)ほしい
という思いから名付
けられた。
優気の住んでいる部屋の番号は31
結の住んでいる部屋の番号は55
私はあのときの、思い出しただけでとろけてしまいそうなあの時間を、一生忘れることはないと思っている。
私には一年半程付き合っている彼氏がいた。大学のサークルで知り合ってから彼からデートに誘われた。何度かデートを重ねたら、最後には人が少ない、夕方の海岸で告白してくれた。彼の気持ちには少し気づいていたけど、知らないようなフリをして、ずっと彼と一緒にいた私は、かなり意地悪だと思う。だけど彼の気持ちはとても嬉しかった。告白にOKの返事をして正式に交際がスタートした。そこから一年半がたち今に至る。
この話は、私が彼の住んでいるマンションに、初めて遊びに行ったときの話だ。
彼の部屋は、小さなマンションの簡素な1LDKだ。家具は少ないが、とてもシンプルで、生活には困らないだろう。
床に座ってテレビを見ながら、彼とたわいもない話をしているときだった。彼が突然会話をやめ、私の方に急に体を向けた。
「あ・・・あの・・・」
なにか言いたげな彼の表情から、少し察しがついた。一年半も付き合っていてまだ彼と一度もしていないことがあったのだ。カップルではお決まりのあれを・・・。だが私はやはり意地悪だった。彼から言わないと、なにも気づいていないフリをしようと、前から決めていたのだ。困っている彼を見るのはすごく楽しかったし、そんな彼をかわいいとすら思っていたからだ。もう一つ理由はあるけども、それは彼には伝えるべきではないと思っていた。
彼は顔を真っ赤にしながらなんとか私に伝えようとしている。もしかしたら私は彼にたいして、生まれたての猫を見ているような感情を抱いているのかもしれない。
彼はかなり恥ずかしがったあと、やっと決心がついたようだ。消えてしまいそうなくらい小さな声で、彼自信の思いを私に伝えてきた。
「キスしても・・・いい・・・かな・・・?」
彼は私から目をそらさず、答えを待っている。その姿もまた可愛かった。だけど私は少しだけ悩んでいるような素振りを見せて、彼の反応を楽しんでみることにした。視線を上に向けて考えているようなフリをする。本当はとっくに答えが決まっているのに。しかしあんまり焦らしていると、彼は本当に不安そうな表情をし始めた。これ以上するのはやめにしよう。本当に彼がかわいそうになってきてしまう。
「いいよ」
「・・・ほんとに?」
「うん」
「ほんとのほんとに?」
「もう、大丈夫だって」
まだ不安なのか、彼は何度も尋ねてくる。どちらかというと私は、彼からのキスを求めている。恥ずかしがりながらも、勇気を出して切り出してくれたのは、素直に嬉しかった。
「ほんとに大丈夫だから」
「じゃあ・・・」
そう言って彼は、私の両肩を優しくつかんできた。彼から私に触れることは何度かあったけど、それでも、今までと違う触れかただった。今まで見たことがない彼が見れるかも知れないと思うと、私の中から、今まで一度も感じたことのない緊張感が出てきた。彼の顔がゆっくりと近づいて来たところで、私は目を閉じた。二人だけのこの空間に、身を預けようと思ったからだ。そして
彼の唇が、私の唇に触れた。
彼の唇は柔らかくて、触れた瞬間心臓の鼓動がより一層激しくなった。彼の手の震えから、彼がとても緊張していることが伝わってくる。彼をこんなに近くに感じたのは初めてだった。それがとても嬉しかった。しかし、初めてのキスは少し唇が触れた程度で、彼が唇を離してしまった。彼は私の顔を不安そうな表情で見てくる。たぶん、さっき私が悩んだフリをしたことが、彼の不安を煽っているのかも知れない。私は彼に申し訳ないことをしたと思った。私は不安そうな表情の彼に向かって
「優くん。ごめん。」
「え?」
「私、優くんの反応を見るのが楽しかったから、ちょっとだけ悩んでるフリしちゃったんだ。本当にごめんね。」
「なんだ、そうだったのか。キスされるのが嫌なのかなって思ってた。」
「違うよ、ほんとはね・・・優くんの気持ちが知りたかったの。一年半も付き合っているから、もうそろそろ冷めてきてるのかなって・・・不安になってた。本当にごめん。」
私は彼にたいして不安を抱いていた。本当に私のことを愛してくれているのか。もう気持ちが冷めてきているのではないかと。彼の愛情を形にして伝えてほしかった。言葉にして伝えてほしかった。そして彼はそれを実行してくれた。してくれたのに・・・私は答えを焦らすようなことをして踏みにじってしまった。彼の気持ちを知りたいがために、おかしなことばかりしてしまっていた。本当に私はダメな女だ・・・。彼に謝らないと・・・
すると彼は今までにない表情に変わった。いつも私のことを気にかけて、心配してくれる優しい彼からは、想像もできないくらいの力強い表情で
「そんなことない」
「え?」
「僕は君のことを愛してる。その気持ちはいつまでも変わることはないよ。だから・・・僕を信じてほしい。」
彼のこの言葉が、私の心にとても響いてきた。今までの不安が一気に晴れた気がした。彼の素直な気持ちが嬉しくて、自然に涙がこぼれてきた。彼の気持ちをもて遊ぶようなイタズラをして、それとは裏腹に彼にかまってほしい。そんな自己中な私を「愛してる」と言ってくれた彼の気持ちが嬉しかった。
泣いている私を見た彼が、また私のことを心配してきた。
「え?どうして泣いてるの?僕、なんかまずいこといった?」
そんな彼を見ていると、私は自然に笑っていた。私も彼に気持ちを伝えようと思った。
「そんなことないよ。すごく嬉しい。ありがとう。嬉しくて泣いてるだけだよ。」
「そっか、それなら良かった。」
彼も私と一緒に笑っていた。二人の距離が一段と縮まった気がした。
さっきは彼から言ってくれた。今度は私からだ。
「ねぇ、もう一回キスしてもいい?」
彼は一瞬驚いた表情をしたがすぐに
「もちろん、いいよ。」
その言葉を聞いた私は彼の唇にキスをした。今度はさっきよりも深く、絡み合うように。彼は私を抱き締めて自分の体に引き寄せてきた。
君のことを決して離さない
彼がそういっているように感じた。私も彼の背中に手を回して彼の体を、心をもっと近くで感じたい。そんな気持ちでいっぱいだった。
キスは次第にエスカレートしていき、二人が気づかないうちに、舌を絡め合う、激しいディープキスになっていた。お互いの愛を確かめ合うように、二人の舌は絡み合っていた。
最初にキスをしてから、どれくらいしていたかわからなかった。でも二人の愛に、歯止めが効かなかったのも確かだ。キスは二人が気づかないうちに、いつのまにか終わっていた。そんな感覚だった。お互いが顔を見合わせたとき、私は恥ずかしくて彼の顔が見れず、彼の胸に顔をうずめていた。
あのあと、彼が運転する車で私の住んでいるマンションまで送ってもらった。また新しくデートの約束もした。ケーキがとても美味しいカフェがあるらしい。考えただけで楽しみだった。
自分の部屋に戻った私は、ベットの上でさっきの余韻に浸っていた。彼とのキスの感触を思い出しただけで、胸がドキドキして、彼への愛で心が満たされていくようだった。私は溢れ出そうな彼への愛を、思わず声に出していた。
愛してる、大好きだよ
二人の時間 胡麻味噌豆乳ラーメンカルビを添えて @reidokarasu
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