ふうあーゆー

田中幾子

第1話

俺の名前は横山祐樹。




正直俺は顔もかっこいいわけじゃないし、スポーツも勉強も苦手だ。「ゆうき」なんて、きれいな響きの名前に負けちゃってる気がしているけど、亡くなった母さんがつけてくれた名前なんだ。


俺はどこにでもいるような普通の高校生で、一つだけ自慢できることは、料理が得意なことだ。小さい頃に母さんが事故で亡くなってから、親父と俺の二人は急に料理がめきめきと上手くなっていった。というのも、母さんが料理上手だったからなんだな。あの味を食べたいってね。


だから、俺の今の目標は、調理師専門学校に通ってレストランを開くこと。勉強苦手だしさ、そのほうがいいかなって思っている。で、目標とは呼べない夢は、そのとき隣にクラスメイトの捺美ちゃんがいてくれたらな。。。な~んて思っちゃってるのさ!




今日も、学校から帰宅して新しいレシピでのお菓子作りに挑戦している。


なんでもドーナツ屋でバイトするくらいドーナツ好きだった捺美ちゃんが最近ダイエットのためにバイトも辞めたらしいんだ。


それで、俺は約束してあげたのよ、俺は捺美ちゃんがそういうことを気にしなくてもいいようなドーナツを作るって。


そうしたら喜んでくれてさ。今、いろいろ考案中なんだ。


とりあえず、揚げないでオーブンで焼くのは決定しているんだが、配合が難しい。美味しく食べるにはある程度砂糖や油分が必要になってくるんだよな。そのへんをなんとかダイエット向けなレシピを考えているところなんだ。


それにしても、捺美ちゃんはなんで急にダイエット始めたんだろ。そんなことしなくたって、今だってすごく可愛いし、勉強だっていつも学年3位には入るしさ。。。でも、俺が詮索して気まずくなるのも嫌だし、とりあえずは彼女に食べてもらえるものを作ることに集中しよう。




 生地を型に流し込んでオーブンに入れる。焼き上がりまで待つこの時間がまた楽しみなんだよな。


でも、あぁ。。。なんだか、急に眠くなってきちゃったなぁ。




少し寝ようかな。。と、俺はテーブルに突っ伏してうたたねを始めた。




猛烈な睡魔に襲われ意識が遠のいていくさなかにどこか遠いところから不思議な鈴の音が聞こえてくる。




季節はずれの風鈴のような。。。リーン、リーン。。。

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