第17話5月7日 光 武 キャサリン 美春

5月 7日 金曜日



「それで、どうかな?僕の小説の出来は?」

 固唾を飲んで僕の小説を読んでいるみんなを見守る。

 今日は金曜日の午後2時。この今いる食堂で光と武とキャサリンと美春が僕の小説を読んでいた。そして、1時間後。

「読み終えたで」

「俺もだ」

「・・・・・・・・・・・・」

 みんな僕の小説を読み終わったみたいだった。


「それでどうかな?僕の小説の出来は?」

 それにみんなして苔むす石の表情をした。

「ダメだったか」

 カクン、と首を縦に落とす僕にアルテミスの矢が地面に刺さった。


「良かったわ」

「え?」

 むくりと起き上がる僕にみんなもニコニコ顔で答える。

「ああ、ほんま良かったでぇ。こんなんかけるのマジで天才と違うん?一樹君」

「俺もだ。幾たびの小説を読んできたが、ここまで天才的な小説は初めて見た」

「え?ええ?本当にこの小説、良かったの?」

「ああ、わいらが保証する。この小説はほんま良かったわ。いや、やっぱりリアルの小説の心理を体現していてほんま良かったわ」

「良かった」


 ほっと胸を撫で下ろす僕に、美春もうなずいた。

「うん。まあまあだね。本当にリアルな少年の心理を描いていて、なんだか中高生の時は思い出しちゃうなぁ。お色気とかもなくて、女性が読んでも、ああ年頃の少年はこんなことを考えているのか、と思っちゃう」

「まあ、中高生の世界は友達が一番重要だから、少なくとも僕の中高生時代はそうだったから、それを描いたんだけど、いい評価が得られて良かった」


 白い蓮華(れんげ)の花が花開いた。

「それで付け加える部分とか、削る部分とかはないかな?」

「いや、ないやろ。これだけで完璧な完成品やで」

「そうか」

「うん。自信を持つといいわ。これになにも付け加える部分はないと思う。完璧な作品よ」

「しかも、読者にこびていないからな。別に客寄せパンダ的な変なつかみを出すとこの作品の骨格が崩れる」

「そうか、わかったよ。そうだ、その原稿いる?」

 みんなして首を横に振る。

「なら、みんなに見せるから回収させてくれ」

 そして、僕はみんなから原稿を回収して、他の人たちにも見せるつもりだった。

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