自家葬儀システム

@Jupes

第1話


C. ジェイ氏の次なる発明は「自動自家葬儀装置」である。


老い先短く死を意識しだした人を対象とする、誰にも迷惑を掛けずにあとくされなく、きれいに死んでいきたいと願う人向けの自動で行われる葬儀の装置がついた家である。


その家が建つ場所の土地は、人の気配のない自然豊かな、または僻地が最高の環境条件である。そしてその土地の有効利用もできる。


もちろん、借家であることが必須である。なぜなら、その所有者が死んだ後しばらくすると、次の人の家が建築されることになるからである。


たいていは、砂漠地帯の中央、ジャングルのような森林の中の草原、荒々しい海岸にそり立った絶壁の上、または名も知られていない山の頂きなどが選ばれる。


その家には、生命感知器がついている。


その家に住んでいる人が死んだと感知したと同時に、設置されていた機械が自動的に作動し始め、すべてを終えるまで動き続けるのである。


簡単に言うと天文学と人工知能を組み合わせて緻密に計算されて設置されているレンズと太陽の光を使った装置が作動するのである。


太陽の光がレンズにあたると、それが着火し、家全体が燃え上がる。


一度、燃えると激しい炎は、またたくまに家全体を包み込む燃焼力を発揮し、完全燃焼させてしまう。その家の建材は、なにひとつ残らないように燃え尽くされるような素材を用いられているからである。


炎と伴って噴き出る煙は空に上昇していくと空中で水滴を集めて大きな雨雲と形成される。


完全に消火された後に少しだけ残る灰はやがて、その雨雲から降り注がれる雨によって溶けだし、溶けたものは土に吸収されていき、その土は、栄養をたっぷりと含んだ良い土壌となる。


その土の中には、その溶けだした要素に化学反応して割れて芽を出す花の種が大量に植えられている。


その種が次から次へと礼儀正しく順番に、土の上に小さな芽を出し、葉を広げ、茎を伸ばし、その先端に可愛らしく膨らむつぼみをつけ、それがやがて美しい花を咲かせると、色とりどりのグラデーションを描く虹色の花園が一面に広がっていく。


良い香りを漂わせている花々に、そよ風が吹くと、花は微量に揺れ、そよそよと揺られて、周囲に魅力的な甘い香りを振りまく。その甘い香りに誘われて寄ってくる美しい蝶が優雅に舞い、更にその特別な蜜だけを求めて吸う為に舞ってくる希少なハミングバードなどの小鳥もおり、虹色の花畑の上に更なる豪華絢爛な色を重ねて動く絵画のようになる。


その家で孤独の中で亡くなった魂は、天使達に支えられて雲の上まで来ると、しばらくは下界を見下ろし、自分自身を弔う壮大な自然界の優雅で美しいセレモニーを眺めることとなるのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自家葬儀システム @Jupes

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る